Less Than JOURNAL

女には向かない職業

「ロマンティック ぶーたれモード」(笑)

「まおにはぁまけてないとぉ思う」とキッパリ言ったわりに、思いっきり派手にドッスンドッスン転んで負けたり。報道陣にぷんすかぷんすかしたり。反省コメントを狙いこんで攻めてくる質問をヘラヘラ笑顔でかわしたり。アイドルとしてはスキだらけのミキテーがとってもアイドルしててめちゃ好きだ。トリノ前に標高の高い場所で練習していた時はバリバリに4回転をキメて自信満々だったのに標高の下がったトリノに来たとたん失敗だらけ……というエピソードもまた、よいではないか。まるで、うまく行けばストンと落ちるが、うまく行かないと真ん中ドッカンのバクチ球を「あとはボールに聞いてくれ、というボールです」と涼しい顔で言って投げ続けている讀賣前田のナックルボールみたいではないか。
そんな前田のナックルみたいな4回転をいきなりオリンピックでなんてムチャだよ……とハラハラしながらも、今回、ひょっとしたら運命の女神はミキテーに風を吹かせるかも。そんな風を呼ぶコだもんね。と、楽しませてもらった。
一歩間違えたらヒールの奈落にまっさかさま……みたいなボーダーラインを飄々と歩き続けているアイドルとしてのミキテーを見ていると、いつも♪にっこにこ顔 しかめっつら 君はお天気屋〜さっ♪と「青空のように」を口づさみたくなる。そういえば、あの曲は長嶋選手のことを歌った曲だというし。なんか、通じるものがあるのかな……とも思う。
さて。そんなわけで、ここ数日、ニュース・情報番組にミキテーがやたら出てくる。しかも、話題は“フィギュア”と言いつつも実質は“荒川金メダル”である。
競技翌日、いきなり「ほれ見たことか」と冷たいマスコミにもヘラヘラ笑顔で決して皆が求めているネガティブ発言をしないミキテーは「つおいぞ」ともケナゲだとも思いつつ、しかし、こうも連日ナマ出演に引っ張り出される姿には、さすがにちょっと胸が痛む。
とりわけ、今日の「バンキシャ!」はひどかった。荒川選手のこれまでの歩みを辿った感動のダイジェスト映像を流し、それをトリノのスタジオで眺めるミキテーをずっと画面の端っこで捉え続けていた。笑顔はなく、ぐっとこらえている……もしくは「はぁ?」みたいな顔をガマンしているのがわかる。さすがに、もうカンベンしてあげてくださいと思った。この映像を流す間、彼女をスタジオに座らせておく理由がわからない。いや、理由があるとしたらすごくイジワルな理由に違いない。試合直後、金メダルを獲った荒川選手をミキテーが祝福する映像。あれは最高に素晴らしかった。でも、それは荒川選手の顔を見るのもつらいであろうライバルとしての悔しさを超越した、友情の奇跡の瞬間だったのだと思う。それを調子に乗って、抱き合って祝福してたから、村主選手には訊けなくてもミキテーならオッケーだろうと「荒川選手の演技をどう思いました?」とズバズバ訊ける報道陣の神経がわからない。あちこちの番組への出演が本人の意志かどうかはわからないけれど、これじゃまるで罰ゲームだ。楽しくて出演しているようには見えないのは、衛生中継のディレイのせいだけとは言えないミキテーの鈍い反応のせいだろうか。なんだか、今までの彼女にはない深いエモーションを感じたなぁ。イヤなこと言われてムカッとした顔を見せるコドモっぽい反抗心をはるかに超えて、かろうじて無表情で答えを返さないことでプライドを死守しているような、そんなふうにも見えた。荒川選手のことを訊かれるたびに、音を立てて心が傷ついているのではないか。五輪マスコットのヘンなぬいぐるみを振り回してアホのコを装っていながらも……(笑)。と、他人事ながら苦しくなった。そんなこと、ふだんはあんまり考えることないんだけど。
オリンピック選手って、競技の外でも過酷なものだな。と、しみじみ。
しかし、そういえば「スケート界のミキテー」から“スケート界の”っていう形容が消えて久しいな。それってどうなのよん。あ、このオリンピックでもうひとり、ムッとする心をグッと押さえているアイドルがいるような気がしてきた……ドキドキ(笑)。

追記(2/27)
でも、今朝「ズームイン朝」でやってた、何かの番組の本番前に“五輪ズーミン人形”に4回転ジャンプさせたりして遊んでたミキテーはゴキゲンちゃんでした。やっぱアイドルには、全力でおもてなしするのが掟。ズームイン、ナイスおもてなし!