Less Than JOURNAL

女には向かない職業

答えはいつもミステリー?

最近、ミステリの王道がマイブーム。エスピオナージュとか古典とか定番とか。で、ちょっといろいろと探したいものがあったんで、オッサン向けミステリも充実している某大型老舗書店へ。久しぶりに2Fの文庫コーナー行ったら何がどこにあるのかすっかり忘れてるのと、ついでに探したいものが次々と思い出されたのとでめちゃめちゃウロウロする。
で、二見文庫の場所がわかんなくて店員さんに訊いたら、「二見文庫の、どーゆー本ですか?」。で、つまり和と洋に分かれているという意味かと思って「海外作品」とゆったら「ラブ・ロマンスですか?」とフツーに訊かれて妙に照れる。なぜならば“ラブ・ロマンス”なんていうファンシーな単語を日常の場で聞いたのは久しぶりだったので。で、「いや、じゃなくてミステリ」とゆったら「……ミステリ?」とあきらかに怪訝な顔をされた。ので、一瞬、ひょっとして二見のミステリ・コレクションが先月で活動休止になったとか、もはや「死語」になってるのかとドキドキする。が、結果、連れてゆかれたのはフツーに二見の海外作品のコーナーであり、フツーに大人気のローレンス・ブロックとかグレン・ミードとかがズラズラと並んでいた。で、「こういうのでいいですか?」と訊かれて「はい」と答えて、その棚を見て初めて気づいたわけですが、今、二見文庫の海外ミステリとゆえば“サスペンス・ロマンスのじょうおう”ことリンダ・ハワード先生とか、あの“火曜サスペンス・ハーレクイン”みたいな路線の温床主流なんですね。つまり、わたしが尋ねた二見文庫の「海外ミステリのあるコーナー」というのは、ようするに「ラブ・ロマンスのあるコーナー」のことだったみたいです。つか、わたし的には二見の海外モノといえば王様のローレンス・ブロックが君臨してて、で、ちょいシブめの謀略小説とかをガンコに出し続けていて、エスピオナージュみたいな“もはやオールディーズ”なジャンルもきっちり出してくれるし、当たり外れは激しいが“王道ミステリの名門レーベル”というイメージだったんですが。もはや大黒柱は、どうやらローレンス・ブロックというよりもラブ・ロマンスのじょうおう達なのですね。

ところで、リンダ・ハワード。ストーリーはちょっとしたミステリとか歴史小説みたいな体裁になっていて、ヒロインは絶対条件としてさほど若くなく、じゃじゃ馬(ハーレクイン用語)、パッと見はそんなに美人ではないが“フシギな魅力”(フシギ、というのがポイント)のある女性。話はテンポよくスイスイと進んでって、ハーレクインよりはヒネリが効いているものの、基本的には都合よくシンプルな逆転とかトリックとかがあって……で、後半(絶対に前半ではない)はものすごいエロシーンがある! このエロシーンがすごい! 最初、長旅のヒマつぶしで空港で1冊買ったのをきっかけに、あまりにベタな展開が面白くて何冊か買って研究したことがある(何の?)。いやー、さすが女王と呼ばれるだけのことはある! 同じような路線の作家のもいろいろ読んでみたけど、やっぱダントツ! すごい! ファンにとってはハズレなし! しかし、ファンでない人にはアタリなし! やっぱ、ワンランク上のハーレクイン……なのかな。どんなシチュエーションでも終盤にさしかかると必ず、ものすごいエロシーンが出てくる。そこまでは、どこにでもいる平凡な女性が経験するアドベンチャーとかシンデレラ物語とか殺人事件とかなのに、ひととおり話が進んだところで「お待たせしました!」みたいな感じでエロシーンが出てくる。で、いきなり描写が細かい。ハンサムな男性のナニをナニしてナニまでして……うわー、めくるめく桃源郷! こんなの初めて! みたいな。で、彼のナニはこんなであんなで、ヒロインのナニはこんなであんなでカレが「ものすごくイイ!」って褒めてくれたの。みたいな。で、結婚しよう! みたいな。しかも、それまでビクトリア時代の封建的な文化の描写とか、仕事か恋かに悩む女性心理とかを丁寧に書き綴っていたお上品な筆致のまま、エロシーンに突入するわけで。これはすごいダイナミズム。女もすなるフランス書院文庫だ。いや、はなからエロ小説を謳っているフランス書院よりも、パッと見はエレガントな小説の形態をとっているぶん、ある意味、余計にエロい。よくある「女性による女性のためのAV」みたいな、なんともいえないムッツリスケベ感というか。で、実際、このジャンルは若い女性たちにたいそう売れているとゆーのがまたエロい。内容そのものよりも、このジャンルの小説の構造と市場に漂うエロ・スピリットに激しく感動した。まぁ、それだけ売れてるってことはフランス書院マニアのオジサン同様、そういうお約束のベタベタ感の安心感……みたいなのを面白がってるマニアも多いのだと思いますが。しかしながら、その内容(と需要)を知ってしまった今では、店頭でフランス書院文庫を買うよりも、リンダ・ハワードを買うほうがはるかに恥ずかしい罰ゲームだなーと思っているわたしなのに、今日は店員さんに「ラブ・ロマンス好きの熟女」と認識されてしまいました。あッ!! わかった! なんでミステリとゆって怪訝な顔をされたのだろうと不思議に思っていたんだけど、それは「え? だってアレ、エロ小説でしょ?」という意味だったのか。いやーん。
今日はわたしのラブ・ロマ記念日(T_T)。

でも、言い訳するようですが、今日買ったのはコレ↓

雪の狼〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

雪の狼〈上〉 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

永遠の名作、不滅の金字塔! そういえば、今日はホントはこの本について書こうと思ってたのに……ラブ・ロマ記念日でついつい熱くなりすぎてしまいました(-_-)。
最近、グレン・ミード読み返しブーム。なんかホッとするのです。
そして今日もまた、地球の平和は守られるのであーる。みたいな。
ある意味、ラブ・ロマよりもベタベタ。
でも最近、ちょっとだけ「ベタ謀略」がリバイバルしつつあるとかいうウワサも。
地球の危機を空想していたなんて、平和な時代だったのかもねー(笑)。