Less Than JOURNAL

女には向かない職業

目は口ほどにモノを言う

オリバー・ツイスト プレミアム・エディション』
2枚組買った〜♪ ものすごい。世界児童文学全集みたいな立派な箱に、教科書みたいな立派なブックレットもついてる。でも6,090円もした、高い(>_<)。あー、尼ゾンで買えば22パーセントOFFの4,762円だったのに。失敗したなぁ。でも、田和レコのWポイントDayで買ったから、まぁ、よしとするか。つか、これを買わなきゃ何を買う。

戦場のピアニスト」を撮り終わった後、次は自分の子供たちのために何か作品を撮ろうと思っていたポランスキーは、自らも子供の頃から大好きだったディケンズに辿りついたという。彼の「子供たちのために」という言葉は、深くて重い。アンパンマンとかポケモンを撮ろうってことじゃないのだ。実際『オリバー・ツイスト』は大人の立場で見るならば、子供のため云々という前提をまったく感じさせない王道ポランスキー作品である。淡々と進む悲惨を俯瞰で淡々とユーモアをまじえて描く乾いた質感や、見終わった後のドロリとした余韻。まさにポランスキー。もし自分に子供がいたら、この映画を我が子に見せようと思うだろうか? たぶん、ちょっと迷うだろう。でも、もし自分自身が子供の頃にこの映画を見たとしたら、たぶんめちゃめちゃ戸惑うとは思うけれど(笑)、その後の人生につながってゆく大きな経験になっただろうなと思う。
まぁ、例の事件もあったわけで、何かっつーとロリコンロリコン言われがちなポランスキーだが。この人は、相手が男でも女でも子供でも老人でも関係なく、内面で通じ合うものだけを唯一絶対的な価値観として、ひとりの人間としての敬意をもってつきあう人なのだと多くの関係者が証言している。実際、そうなのだろう。で、わたしが彼の映画をこんなにも好きな理由もそこにある。そういえばディランも自伝の中で、互いに重要な人物と認める人々についてボノと語り合った時、ポランスキーの名前も挙がったことを書いている。
原作の映画化を自らが望んでいたという亡き妻シャロン・テートに捧げられた『テス』、自らの感性のすべての根源である戦争体験を初めて真正面から描いた『戦場のピアニスト』、そして自分の子供たちの未来のために作った『オリバー・ツイスト』。
ここに3部作が完結した。3部作というよりも、異なる時空に描かれた同じ物語と言うべきなのかもしれないが。3作はつながっている。さまざまな意味で。

ひとつの証拠として、このパッケージ……。

戦場のピアニスト [DVD]

オリバー・ツイスト [DVD]

ね。
この相似形を見ただけで、それ以上の説明は何もいらないと思った。
爆撃された廃墟にたたずむピアニストと、華やぎ賑わう雑踏にたたずむ貧しい孤児。
それは、ポランスキーにとって「同じ場所にいる、同じ人」なのだ。たぶんね。
ポランスキーは、そうやって「人間」を見ることのできる目を持った人なのだと思う。そして彼は、映画を通して自らの「目」でモノを見る経験を我々に与えてくれているのかもしれない。

ダラダラ長々としたヤボなオーディオ・コメンタリーの何万倍も雄弁なメッセージだ。