Less Than JOURNAL

女には向かない職業

『ダージリン急行』

 ウェス・アンダーソン監督は素晴らしい。

 あれこれと考え、あちこちに瞠目し、そんなこんなで笑ったり泣いたり……と書きたいことは山ほどあれど、結局『ダージリン急行』の感想はそのひとことに尽きる。
 映画館に出かけ、椅子に座り、場内が暗くなった瞬間*1に、わたしはウェス・アンダーソン監督の人生そのものか、脳ミソか、目か、わかんないけど、とにかくそういう何かに、なれなれしく便乗させてもらえる。監督の生きている時間にヒョイと途中乗車する。『ダージリン急行』本編のオープニングで、走り出した急行の最後尾に追いついて飛び乗るエイドリアン・ブロディみたいに。そして映画の中に流れているのと同じテンポで息をして、傍観して、同じリズムが伝染して、共感して、映画が終わると現実という駅にポイと放り出される。それだけの時間が、本当にかけがえない。こんなにも素直に「他人の時間」に乗っかって旅をすることを楽しく思えるなんて、その至福を教えてくれたのが彼(と仲間たち)の映画だ。ただウダウダしているだけでも、すべての、ありとあらゆる時間はすべてキラキラした宝石なんだなーと思う。たぶん、すべての人の人生はツッコミどころ満載。だから楽しい。別に、何か特別なことをやろうとかもっと頑張ろうとかは思わないけれど、彼らの映画を観たあとはいつも「せっかくの機会なのだから、人生もっとしっかり楽しもう♪」と、ちょっと元気になる。

 @恵比寿ガーデンシネマ
 この映画館、ここんところ『再会の街で』『君のためなら千回でも』『ダージリン急行』と、3連続で万馬券みたいな映画を見てるな。そもそも、この十年でよかったと思う映画をあげてくと、ここで観た率が異常に高い。実際いちばんよく行ってるし。わざわざ渋谷とか新宿とか、ましてや六本木ヒルズまで行く気は起きないけど、まぁ、ガーデンシネマなら帰りに寄ってくかとナニゲに観た『ステイ』が驚愕の大ヒットだったりするし。ようするに、なにかとご縁がある映画館である。まぁ、仕事場から歩いて行ける便利さってのも大きいのだが、ロードショウ作品に加えて、企画モノのセンスとかも好きだし、そもそもロケーション込みで好きなのだと思う。恵比寿ガーデンプレイス自体は、いまだそれほど馴染めない場所だが。映画館の周辺環境としては、繁華街でもなくモールでもなく僻地でもないけれども、その3要素がちょっとずつ入ってる感じもするところが好き。あと、ここ数年でにわかにトレンディ感が薄れて、ほどほどにやさぐれてきた感じがまたいいのです(笑)。

 さらに。最近、恵比寿ガーデンシネマがますます好きになる出来事が。
 なんと! 隣接する恵比寿三越B2のイートインコーナーに、神保町の老舗カレー店『エチオピア』が出店している。映画とカレーの組み合わせは言うまでもなく最高なわけだが、そのカレーが神保町カレー(エチオピアとかスマトラとか欧風とか)だと更に最高である! しかし、神保町で映画の前(or後)にカレーを食べるとすると、映画を観るのは岩波ホール。もしくはアテネフランセとか。もちろんどっちも素晴らしいのですが*2、いかんせんレジャー感は薄すぎ。選択肢なさすぎ。つか学生デート臭すぎ・苦笑*3。なので、ガーデンシネマ+エチオピア・カレーは最強。と、ちょっと前に思っていたので、今回ついに恵比寿エチオピア初体験したよ。しかも、映画が『ダージリン急行』と来たもんだ。インドな映画+エチオピアなカレー。至福すぎる。ただでさえ久々のエチオピア・カレーのスパイスに恍惚のワタシでしたが、もう、天国を突き抜けて宇宙の喜び。ビバビバカレー、ビバ神保町、ビバダージリン急行、ビバ監督!

 しかし、さすが三越! 恵比寿三越限定メニューでコラーゲンたっぷりの美容によいカレー(?名前失念)があった。地球上、三越あるところに三越マダムあり。三越マダムある所に美の追求あり! こんな男くさいエスニック料理にも、「美容にいい」という効能を要求するスパルタぶり。三越マダムたちのあくなき美への欲望に比べたら、トワコもエビちゃんもまだまだ青二才だぜ!

 ところで今、これ書いてて気づいたんだけど。
 『再会の街で』って、マンハッタンを舞台にした再会のお話だからそーゆータイトルにしたのだろうか? 『ブライト・ライツ、ビッグ・シティ』映画版の邦題が『再会の街』だった。てか、そういえば『再会の街』はなぜDVDにならないのだろう。フィービー・ケイツ萌え! ありがたくも早々にDVD化された『レス・ザン・ゼロ』と同様、原作には及ばないとしても、なんだかんだゆって原作者がかかわっているし、バブルもはじけて世紀も変わった今、もちっと評価されていい映画だと思うが。

 待望のDVD化といえば。
 ルイ・マル監督『プリティ・ベビー』が遂に出る! ブルッキー萌え!

「ダージリン急行」オリジナル・サウンドトラック

「ダージリン急行」オリジナル・サウンドトラック

*1:まぁ、正確には、暗くなった後に予告編とか、何度も見るとマジうざくなるカメラ怪人がブレイクダンス踊る海賊版撲滅PRをしばらく見なければいけないのだが

*2:特にアテネフランセは今、フレデリック・ワイズマンまつり絶賛開催ちゅう! すばらしすぎる! ワイズマン+カレーも、なかなかマニアックな食い合わせと思われる

*3:今はよしもとがあるのですよね、行ったことないけど