Less Than JOURNAL

女には向かない職業

ブライアント・パークに春が来た。

 禁断の香り、ついに手に入れてしまった。

 うれしくて記念写真。

 何が禁断かというと、いちばんにはお値段なんですけどね(^_^;)。

 NYで、高級ブティックさながらのゴージャスすぎる店を構える《Bond no.9》。いつかは、この店の高い敷居をまたいで、リュクスなソファーでくつろぎながら好みの香りをゆっくり選んで「これいただくわ」とやってみたいものだと憧れておりました。それがついに昨年かな、日本上陸。ヨーロッパの老舗CREEDアメリカで展開しているブランドで、それはもう、どれだけゴージャスかっていうと、写真のボトルを見ればおわかりかと。
もう、ね、昭和の応接間に燦然と輝いていた舶来みやげのナポレオンのブランデーを思い出さずにはいられない。

 このブランドの創業者は、フランス人で25年間ニューヨーク在住のパフューム・エキスパート、ローリス・ラメ女史(アメリカの巴里人、てことだ)。ニューヨークへの愛情と、生まれ故郷への愛情の融合ってことで、マンパッタンを東西南北に香りとして分類し、21世紀のメトロポリスと言われるニューヨークを表現しようとしたのです……以上、リーフレットまる写し。

 それぞれ"Chelsea Flower""Broadway Nite""Madison Soiree""ParkAvenue""Central Park""Chinatown"などなどエリアの名前や、ニューヨークならではの都会の喧噪とか、平和への祈りとかをテーマにした名前がついている。そして香りは、それぞれの場所からインスパイアされたものなのです。チェルシーでは花市場の香り、パーク・アベニューでは上流マダムっぽい洗練ゴージャスな香り、リトルイタリーではオレンジジェラート(!)。だったらウォールストリートはカネの匂いか……と思いきや、あの辺の「ほのか〜に香る潮風」というのが表現されているユニセックスな香りで、もう、男女同権&セクシー&素敵って感じ。これはもう、観光客もニワカヌーヨーカーを気取って大喜び(←あてくし)。しかし、東京23区内くらいの範囲内でこれだけいろいろ、ハッキリと違うイメージができるって、やっぱりニューヨークって面白い。東京もエリアによってめまぐるしく雰囲気変わるけど、それぞれに香りを作るっていうのは難しい気がするもの。

 香水って、「夏のリヴィエラの夜風のイメージ」とか「激しい愛に溺れる愚かな歓喜のイメージ」とか言われても「ああ、そうなんですか」としか言いようがない。が。マンハッタン内限定だったら、わたくしのような異国の庶民でも、がんばり次第では学習と経験で何とかなりそうだ(←何が「何とかなる」のだろうか)。いろいろお試しさせてもらって、「ああ、あの場所にインスパイアされたんだなぁ」というのが伝わってくる絶妙な香りがいくつもあった。これなら自分が好きな場所から香りを選ぶ、なんていうブルジョワなこともできるわけです。すてきー。思い出の場所の香りを身にまとうなんて、修学旅行で買った北海道のラベンダー香水以来の経験だ(笑)。

 ボトルのデザインも凝っていて、ウエストサイドではト音記号が描かれていたり。チャイナタウンは中国陶器っぽかったり。そしてボトルを納めた紙箱もひとつひとつ手作りという、昔の高級デパートのギフトボックスにありそうなレトロ調。

 そんなわけで、たしか去年日本初上陸だったと思うのだけれど、銀座や新宿でイヤになるほどお試しして、ムエットもたくさんもらって(また、このムエットが地下鉄のトークン柄のロゴがついたコースター風でかわいい)、しかーし、なかなか購入には至らなかった。どうしてもひとつだけ選べなかったのと、冒頭に書いたように衝動買いするにはお値段が……。

 が、この春、伊勢丹限定の↑が気になって気になって。ちょっと匂うだけ……とカウンターに出かけてみたら秒殺。秒殺したというか、秒殺された。うん、ブライアント・パークって感じだ! ほのかなスズランとかバラの香りが、ザ・花園!庭園!という大袈裟なものではなく、本当に大都会の真ん中にある小さなオアシスって雰囲気で。ボトルのデザインも、ここで開催される野外ファッションショーのモデルさんのイメージらしいのだが。香りはばりばりモード系というよりもカジュアルな感じ。なんとなく、セレブも昼休みOLさんもジョガーもいる、リッチも庶民も共存する(笑)午後の日比谷公園噴水広場みたいなイメージ? だから、ゴージャスとカジュアルの両方いける。毎日ふつうにつけられそう。
ものすごく好きな雰囲気、欲しかった香りのイメージぴったり。他にもいろいろ試したけど、店員さんにもこれがいいって言われた。その人に合ってる香りの時は、最初に嗅いだ瞬間の表情でわかるって。名前から想像したイメージで、ぴったりの香りを見つけることができたのって初めて。

でも、なんでブライアント・パークが欲しかったかはヒミツ。
もちろん、マイク・ラブが朝のワイドショーでライブやった場所だからではないですよ(でも、それもあるかもしんない・泣)。マイクの香りは、なんだろう、シーブリーズとか? いや、絶対ムスク系だ(笑)。

 すごく気に入った香りを見つけるのって、新しい靴とかバッグを買うよりうれしい。
 でも、実は、もはやひとつ手にしてしまったら、次は夏の香りが欲しくなるような気がしております。ハンプトンズかコニーアイランド。どちらも夏休みらしい匂いなのだけれど、名前のとおり、片方はスノッブな潮風で、片方は庶民な潮風。コニーアイランドは、本当に夏の遊園地って感じがしてすごくワクワクした。お菓子と海水浴場の匂い、ちょっとラムネっぽい? CLEANにも似たような香りがあったけど。なんだろ、本当にアメリカの夏休みの匂いっていうか。で、東海岸で……そうだ、あのね、ドゥーワップが聞こえてきそうな香り!
 いかん、そんなこと書いてたら、ますます欲しくなってきた……。