Less Than JOURNAL

女には向かない職業

さかさにして見ると怒ったオジサンになる絵、みたいな。

 驚いたな。

 『アイ・アム・レジェンド』。

 今さら、ツタヤで返却ついでの惰性で借りたわけですが。想像していた以上にハラハラ、ドキドキで、最近の「超大作」系のなかではけっこう面白かったなー。ただ、ま、ちょびっと苦い後味が起こる終わり方はどんなもんかねぇ……とか、軽い感じで見終わって。

 そしたら、セル版2枚組では特典映像に「衝撃的すぎてボツになった別エンディングver.」が入っているという。本編でもじゅうぶん衝撃的だったので、どんだけ衝撃的なんだろうかと気になってググッてみた。

 驚いた。

 もともと、まったく違う別エンディングが存在している映画があまり好きではない。「終わり方」がハッキリしないまま撮られている物語は、たいていボンヤリしたとこがある。ジャムセッションだって、エンディングだけはキッチリ決めてから演ろうぜってなもんだ。

 ただ、この映画はちょっと事情が違う。

 公開直前に差し替えられたという未公開エンディングを見た。
 これはすげーや。そこまで見てきた本編のストーリーがまったく違う物語として動き始める。たとえば、ただ単にビックリさせるためだけに存在していたのかなと思っていた場面が俄然、強烈な皮肉としてギラギラと輝き出すわけだ。

 ようするに、軽くネタばれるが、公開ver.はフツウの超大作パニックSFホラー映画で、それを本来の別エンディングに変えたとたんあからさまなアメリカ批判映画になる。

 で、アメリカではDVD発売直前に別ver.がネット上でリークされて、大きなニュースになっていたらしい。つまり、これをボツにした映画会社への批判の意味でね。

 エンディングがボツったことにより、ストーリーから、細かい描写、そしてタイトルさえもガラリと変わってしまった。
 そう、何よりもタイトルの意味あい……もともと、これがものすごいメッセージであったのだ。それが、差し替えられたバージョンでは読んで字のごとく、地球に遺された最後の「男(と書いてレジェンドと読む)」みたいなことにキレイに、だけど特に深い意味もないフツウのタイトルとして話をまとめちゃったんだから、ホント、ウルトラCだな。

でも、映画は大ヒット。
すごいね、アメリカって。いろんな意味で。

 でも、まぁ、映画会社を支持するわけではないが、たしかにこの超大作で、あのエンディングは……あまりにも、あまりにもわかりやすすぎるんだよ。批判が。もちょっとひそやかにできたらよかったのに、というのはあるな。もしかしたら映画会社もそういう意見かもしれない。こーゆー類のボツネタが出てくると、今は間違いなく権力側のメジャーカムパニーが真っ先に格好の批判対象になることは、会社もわかっているわけだから。

 いや、ほんと、激しすぎ。つか、作り手の怒りがまっすぐに刺さってくるよう。
 
 最初に載せたサイトとか、もうずいぶん消されちゃったみたいだけど。たぶん、英語サイトを探したらどっかにまだ別ver.載せてるとこあると思う。

アイ・アム・レジェンド 特別版(2枚組) [DVD]

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