Less Than JOURNAL

女には向かない職業

とってもウマナミ

↑エントリーのタイトルは、MEN'S 5によるアニメ『みどりのマキバオー』エンディング・テーマのタイトルである。が、本題にはまったく関係ありません。ただ、久しぶりに思い出したので書いてみたくて書いてみました。今日はマキバオーじゃなくて、ジンガロです。先月下旬から木場公園内特設シアターで始まった“ジンガロ”の再来日公演にご招待いただいて、見てきたのでした。

 かれこれ十数年前から、いろんな人からジンガロの話は聞いていた。ただ、誰に聞いても今ひとつ具体的なイメージが湧かなかった。というか、誰もちゃんと説明してくれなかったといってもよいのですが。

 「馬と人が一体化して見せる音楽劇というかね、で、ストーリーになっているわけじゃないけどストーリーでね、ものすごくスリリングで面白くて、だけどなんだか泣けちゃうし、とにかくすごいのー」みたいな、一生懸命に説明してくれるほど「スピークジャパニーズッ!」もしくは「あんたバカ?」状態の説明になるんですよ。なぜだか、誰もが。あるいは、ものすごーく、ものすごーくスノッブな人(たとえばブンキャ人)に聞いてみると「まぁ、こればかりは言葉では説明できないな。いちど見てごらん。フッ」とか「ジンガロは人生観が変わるよ。フッ」とか「人間なんて、たいしたことない生き物さ。フッ」とかポエミーなことを言い出されて、さらに「あんたバ…………まぁ、なんか、とにかく説明しづらことなんだろうなということだけはわかる! という感じで。

 でも、そんな風にひじょうに「クチコミ」になりづらいジャンルであるにもかかわらず。さらには、パリ郊外のちょっと観光では行きづらい場所で公演がおこなわれているにもかかわらず。ジンガロを見たという人は意外と多くて、しかも、それがいろんな年齢、職業、シュミの人だったりするのもフシギで。で、共通するのは、誰もが「いちどは見てごらんなさい」と力強くすすめるってこと。そんなこともあって、私の中ではジンガロというのはちょっとミステリアスなキーワードというか。馬と人のアクロバティックな醍醐味に感動するのか、サーカスをオペラ的に昇華させた演劇として感動するのか、あるいは自分でもよくわからない何かに突かれて泣いちゃうのか……もしくは、なんだかよくわかんないのか(笑)。と、ある種、ブラックボックス(でも、中身は物凄いらしい!)みたいな存在だった。で、05年の初来日時もちょっと見てみたいなぁと思っているうちに結局は見逃して。で、今回はいよいよ見てみるかなと思いつつも、それにしてもさすがにチケット高いなー、こんなトーシローがいきなり投資できる値段でもないけど、どうしよーかなー……とウダウダ二の足を踏んでいたら、ご招待をいただく幸運に見舞われた。これぞまさに、エンジェル・アット・マイ・テーブル的な。

 で。見た。そして、いろんな人が語ってきたことの意味がやっとわかった。
 それは、これがどういう出し物であるかという「目に見えるもの」については何とか説明できるけど、それによって得る感動は多くの人にとって「説明ができない」ものだということだ。なんか、ものすごくバカみたいにしゃべりまくりたいよーな気もするし、逆にブンキャ人っぽく「フッ。百聞は一見にしかせんべい」とかゆってみたい気もする。
 来た!見た!勝った!
 そんな感じだよ。とにかく、まさにそんな感じだ。何に勝ったのかはわからないがな。自分のちっぽけな、汚れた魂にかな。フッ。←あー、ウソウソ。超ウソ。

 今回上演されたのは、前回の来日時とは違う新作だそうだが。ルーマニアのストリングス・アンサンブルとブラスバンドが奏でる音楽もまた素晴らしく、まさにワールド・ミュージック的な雰囲気たっぷり。アメリカではブロードウェイとラスベガスがハイ・アートとロウ・アートの融合、みたいなことを言われているけれど。ジンガロもまた、ある種のハイ&ロー・アートの融合であり、ただしそれがアメリカとは真逆なカタチで融合しているんだな。うまく言えないけど(←でも、見ればわかるよ)。そこらへん、ヨーロッパの芸術の成熟を感じさせる。セレブが着飾ってオペラハウス……みたいなものだけが至高の芸術なのではなくて、至高のホントの意味は内面にあるということを誰もが暗黙の了解でわかっているという、そういう成熟。ひらたく言えば、シラスジロウ的?(笑)

 結論。私と同じようにジンガロが気になっている人には、断然おすすめです。ご招待いただいたオレがいうのも説得力がナニでアレなんですが(笑)、20000円のチケットというのはたしかにちょっと躊躇するかもしれないですが、この一期一会の贅沢の対価としては正しい。というか、お得です。いやー、躊躇した自分を反省したよ。日本で見られるというのも、希有なご縁と思いますしねっ。ワウワウで放映もあるようだけど、これは絶対にライブに尽きると思います。オレンジ&ブラウンのエルメス色のエントランスをくぐる時、ちょっとブルジョワな気分も味わえちゃいますわよ。おほほ。

 ところで。「とってもウマナミ」がカップリングに収録された「マキバオー」のシングルが、今、中古価格で5000円台から最高9800円がついていた。ディック・フランシスもビックリ。値段もウマナミ! か。

走れマキバオー / とってもウマナミ

走れマキバオー / とってもウマナミ