Less Than JOURNAL

女には向かない職業

ひみつ姉妹のひみつ

 今年もあっという間に終わりですねぇ。

 て、それはさすがにまだ早いな。

 しかし、これだけ暑い日が続くともう、なるたけ先のことを考えたくもなるわけで。聞くところによると、今年は残暑ってのが10月くらいまで続くらしい。なので、まぁ、とりあえずちょっとは涼しくなる10月あたりのことを考えて暮らしている。
 たとえば、10月にリリースされるアルバムのこととか。

 The Secret Sisters。

 ※イチ押しなので、大きくしてみました。


 ローラ&リディア・ロジャース姉妹からなる、ノスタルジア・カントリー/アメリカーナ・デュオ。この8月にジャック・ホワイトのプロデュースで、彼の《Third Man Records》からデビュー7インチ・シングルをリリースしたばかり。そして10月にはTボーン・バーネットをエグゼクティブ・プロデューサーに迎えた初アルバムがユニバーサルから出る予定だ。

 ジャック・ホワイトと、Tボーン・バーネットのふたりがお気に入りの姉妹デュオ。とゆーことは、あーた、そりゃもう、つまらない筈はないのは当然なんですが。

 もう、予想以上!


 そのデビュー・シングルは『Big River/The Wabash Cannonball。もう、アー写からして最高!


 たまらん!これ見た瞬間にハートをズキュンとやられました。
 ジャック・ホワイトもなんだかメンバー調だし(笑)。

 まず、何がすごいって選曲がすごい。大胆にもジョニー・キャッシュの名曲「Big River」のカヴァー。そしてカップリングの「The Wabash Cannonball」は古いフォークソングで、ロイ・エイカフでヒットしたが、最初に有名になったのは1929年にカーター・ファミリーが録音したバージョン(たぶん)。
 つまり、ジョニー・キャッシュとカーター・ファミリーのカップリング。うーん大胆。
 でも、かわいいからオッケーヽ( ´ ▽ ` )ノ

 この「Big River」は、数あるキャッシュ先生のカヴァーの中でもっともモダンかつ過激なバージョンかもしれない。イントロから歪みまくりで弾きまくりのジャック・ホワイトと、まるで1920年代からタイムスリップしてきたようなThe Secret Sistersのノスタルジック・ハーモニー。パッと見は対極にあるふたつの音楽が、キャッシュの楽曲の中で結びついて融合している。なんかもう、この時空の超えかたは凄すぎて呆然とする。
 ある意味、ほとんどSFみてぇなロックだな。
 セッションにはマイ・モーニング・ジャケットや、ラカンターズのメンバーも参加しているようだ。
 いくら「ジョニー・キャッシュはロックだ」と言われても、特に日本人は、どうしても“カントリー”という枠組みにとらわれて、感覚的に今ひとつピンと来ないところはあると思うのだが。これだけ正面突破のロック・アプローチで、かなり大胆に伝統的カントリーやロカビリーから逸脱していて、それでいてリスペクトたっぷりのアレンジメントのカヴァーを聞くと、キャッシュのロック的側面というものが理屈でなく感覚でわかるような気がする。

 ジャック・ホワイト節を大フィーチャーした「Big River」に比べると、カップリングの「The Wabash Cannonball」はThe Secret Sisters本来の持ち味に近い感じなのかな。オールドタイミーなハーモニーを、フォーキーに響かせている。とはいえ、スピード感あふれるシャープなグルーヴはフツウのレトロ・カントリーものとは一線を画しているわけだが。My Spaceで公開されている音源などから想像するに、「Big River」から10月のアルバムへとつなぐバトンタッチ的な曲ということなのかも。

 ということで、シングルとはまた全然違う雰囲気になりそうなアルバムも楽しみ。
 超ご多忙のTボーン大先生、さすがに現場でのプロデュースまでは手が回らなくて、今回は管理職的な肩書きになっておりますが。彼女たちのことは相当お気に入りのご様子。エグゼクティブ・プロデューサーとして、いかにも彼らしい、伝統的でありつつ現代的な世界をバッチリ提供しているようだ。
 その声が持つ世界観を生かすためにと、ふんだんにビンテージ・アナログ機材を導入。スタジオにもこだわって、ナッシュヴィルのブラックバード・スタジオで録音。という新人としてはかなり贅沢なプロジェクトを実現するために、スケジュールは節約しまくって、濃密な2週間のマラソン・レコーディングで仕上げる……なんて、もう、先生ったらニクいわ。トニー谷もビックリのナイス・ソロバン勘定!

 ちなみに、アルバムについてはMy Spaceや音楽情報サイトでもちらほら出始めておりますが、なんかもう、選曲がものすごいです。便宜上はレトロカントリーとかアメリカーナとか、そのあたりに分類されてはいるけど(見た目的にもそんな感じだし)。もう、何でもありのアメリカン玉手箱。古いトラッドもあれば、バック・オウエンズもジョージ・ジョーンズもあって。ハンク・ウィリアムスの「ハウス・オブ・ゴールド」もあれば、シナトラの「サムシング・ステューピッド」なんかも歌っている。で、そういった名曲カヴァーと並んでも違和感のないステキなオリジナル曲もある。ちなみに「サムシング〜」はすでに試聴もできますが、かなりチャーミングな仕上がりで個人的に超お気に入り。そして実は彼女たち、アラバマ州はマッスルショールズが地元! ということで、自然とそういう雰囲気も漂っていたりして。

 なんというか、フシギな魅力のある歌声なのですよ。純度が高い、というか。だから、いろんな時代のいろんな曲を歌っていても不埒さを感じさせないのかな。とても素直で、奇をてらったところはない歌なのだけれど、どれだけ聞いていても飽きそうにない。ずっとそばに置いておきたい歌声、というのは彼女たちみたいなハーモニーを言うのかもしれない。

 10月のアルバムが、今から楽しみで楽しみでしょうがない。

 アマゾンJPでも予約受付ちゅうだったので、早速ぽち。

Secret Sisters

Secret Sisters

 今年もあと4ケ月もあるんで断言はできませんが、個人的には今年の最優秀新人賞(←オレ内の)大本命だな。

《The Secret SistersのMySpaceはこちら》
http://www.myspace.com/thesecretsisters


 で。ついでにもひとつ。


 こんなことを言ったそばから、今日、ネット徘徊してたら、またしても別の面白いバンドに出会ったのです。こちらもじぶん内新人賞ノミネート確実。
 たまたまプロモーションで期間限定アルバム無料DL(いわゆる投げ銭方式でね)をやっているのを見つけた、The Vespers。こちらは、ちょっとオルタナはいったカントリー&フォーク・ロックって感じですが……またしても姉妹ボーカルですよ。しかも、姉妹2人と兄弟2人(2家族ってこと)の4人組という珍しいメンバー構成。

 これがまた、モーレツに素晴らしい!

 ルックスもなんだかすごくイイ雰囲気で、カッコいい。
 そして彼らが、純粋なナッシュヴィル出身バンドだと聞いてまたビックリ。
 近年、ナッシュヴィル風味を洗練されたポップに取り入れている人は結構いるのだが、意外とナッシュヴィル自体にはそーゆー人が少なかったりする。ドーナツ化現象、つーか。そういう意味でも、非常に興味深いバンド。

《The VespersのMySpaceはこちら》
http://www.myspace.com/thevespersofficial



 今、オレの中で吹き荒れる姉妹ブーム!
 しかも、どっちもキーワードはナッシュヴィル


 ひょっとして、これから“姉妹アメリカーナ”が来るのか!?


 来ねーよ。


 うーむ、ちょっと楽しくなってまいりました。