Less Than JOURNAL

女には向かない職業

輝く!オレBBG大賞!


 街を歩けば、あちこちから人々が「今年のベスト・アルバムは何ですか?」と訊ね合う声が聞こえてくる。季節の風物詩だ。ああ、今年も年末なのだなと思う。
 「今年はブルースの年だったのぉ」「だよねー」「ああ、まさかクラプトンとウィンウッドが一緒に来てくれるとはのぉ」「はぁ? てか、むしろブラック・キーズですけど?」などという、澄みわたる冬空にも似たおじいちゃんと孫の会話を小耳に挟み、思わずコートの襟を立てて足早に家路を急ぐ私である。何を書いているのかよくわかりません。

 それにしても、年末になると人々が「オレの年間ベスト・アルバム」を選ばずにはいられなくなったのはいつ頃からだったか。てか、むしろ、私が年間ベスト・アルバムという概念への関心を失ってしまったのはいつ頃だったか。なんかもう、ホントにどうでもよくなってしまった。関心というか、昨日の晩飯も忘れる年頃になると1年前に聴いていたものなんてムリ。元旦から大晦日までの間に聞いた膨大なレコードの中から、10枚なんてムリ。あと、ひとに聞かれて「〇〇です」と答えると、なんか、それで性格判断みたいなこと言われるのも面倒くさい。
 ここ10年くらいの感覚は、だいたい年間で何十枚かの心に残るレコードがあって、で、それが3年ぶんほどたまったところで自然とベスト10枚が絞られてくるような……そんな感じでやってます。前向きに解釈するならば、ここ数年、自分にとって必要なレコードの取捨選択が格段に上達したのではないか。と。

 で、ベスト・レコードはさておき。
 私が選考せずにはいられない年間ベストといえば、ベスト・オブ・BBG(ぶんぼうぐ)だ。BBGっつーのは使ってみないとわからないし。文具の達人と呼ばれる方々のマネもしてみたのですが。結論として、BBGってのはあくまで自分の用途とか職業によって便利さが決まるわけで。スーパー・デキリーマンのビジネス手帳は、同じように分刻みのアポイントをこなすひとがマネして初めて役に立つわけで。でもねぇ、ミーハーだから、〇〇さんの愛用品とか、老舗の逸品と言われると手を出さずにはいられないの(´・ω・`)。

 さて。そんなわけで、今日は本当にどうでもいい話題で申し訳ありません。本当にどうでもいいオレのベストBBG2011を発表します。

 文豪が愛した原稿用紙で有名な満寿屋から出ているノートがある。その名も《MONOKAKI》。いちばん小さいB6サイズでも1000円近くて、まぁ、最近はやりの高級大学ノート(?)というか。これまでも“A5判で太めの罫線入り”というノートを見つけると、片っ端から試してきたのだが。飽きっぽい性格もあって、なかなか定番というのが見つけられなかった。が、気がついたら、飽きっぽい私が今年は《MONOKAKI》しか使っていなかった。というわけで、満場一致で本年の輝く!ベストBBGに決定した。おめでとうじぶん!


これです↓ 私はA5ヨコ罫を愛用ちゅう。
A5 MONOKAKI/物書き ノート 無地 N5


 やっぱし、なんだかんだで公私ともにいちばん大事なBBGはノートなんである。仕事の打ち合わせとか、インタビューの準備とか、雑誌の記事で気になった情報とか、レコードや映画のちょっとした感想とか。そういうものを、以前は手近にある紙切れにぐちゃっと書き留めていた。当然、しばらく経つと捨てちゃったり失くしたりする。しかし、そういうものは後々けっこう役に立ったりするのだ。原稿を書く前の箇条書きメモも、あとで見返せば原稿よりもいいことを書いてたりして。
 せっかくのいいアイディアが合議制によってどんどん先細って行くことがあるように。頭の中から出たものの、いちばん最初のカタチがメモ書きには残っている。なので、ある時期から、何冊かノートを常備して、あらゆることを記録として書き留めておくようになった。で、カタチから入る者としては、それなりにノートにはこだわりたい。が、あまり高価だとガシガシ書きとばすのが勿体なくなる。かといって、性格的には100円ノートではテンションが上がらないタイプなので、まぁ、よさげなノートを見つけたら買って試してみるのがシュミということにしている。

 《MONOKAKI》は、使えば使うほどよくできているなぁと思う。細部にわたってよく考えられている。ノートを使う時にいちばん気になるのは、万年筆で気持ちよく書ける紙かどうかなのだが。そこはもう、文豪の原稿用紙のDNAがモノを言うわけで。まるで問題なし。罫線の幅も、太めのペン先でガシガシ書いてストレスがない絶妙なサイズ。筆記具やインク瓶があしらわれた切り絵の表紙もおしゃれ。そして、長く使っているうちにだんだん良さがわかってきたのが、表紙(と見返し)の紙質。厚紙と呼んでいいくらい、最初は「えっ!?」と驚くほどの厚くて固い紙。でも、内側にペンホルダーとかポケットがあるノートカバーに入れてみて理由がわかった。ものすごい安定感、デコボコを気にせずに書ける。これ、とっても大事。あと、ノート単体で持ち歩く時もクタッとならない。中身の保護にもなる。これも、とっても大事。けっこう乱暴に扱うので最後は表紙がボロボロになっちゃうけど、この表紙はキレイにボロる。これも高得点。お値段はちょっと高めだけど、毎日使うし、たっぷり書けるし、のちのちまで保管するものだし。コスパも大満足。最近はロフトとかでも売っているし、定番商品としてずっと買えるといいなぁ。

 以上、今のところまったく不満な点がない満点ノート。あえてひとつだけ挙げるならば、名前がね……。これは、ごくごく個人的な事情なんですが。文章を書いてお金をいただいているけど、かっこよく「物書き」と名乗れるような身分でもないものでねぇ。表紙にずばり《MONOKAKI》と書かれているのが、ちょっと気恥ずかしい。あんまりデキていない男が「デキる男手帳」を持つようなものだ。いや、ニセ医者が「ISHA」と書かれたTシャツを着て歩いている気分を想像してみてほしい。

 そんなニセ医者、いねぇよ。

 と。

 ここまでの勢いで、ついつい《MONOKAKI》と一生添い遂げるようなことを書いてしまいましたが。
 そうは言ってもねぇ。
 やっぱし、そういうわけにはゆきません。
 来年も、とりあえずメインは《MONOKAKI》でいく予定ですが。秋にロンドンに行った時にも、しこたまいろんなノートを買いこんでしまいましたの。イギリスといえば、オサレ雑貨の本場。BBGにも独特の魅力があり、その誘惑には抗えませんでした。「人間は、毎日ビフテキを食ったら飽きてまうやろ」「男は浮気をする生き物でR」と居直る殿方の心が、少しだけわかる気がします。ふっふっふ。

 冒頭の写真にあるノートも、ロンドンで購入したもの。今年ずっと使っているLAMYの万年筆・ボールペンの限定色アクアマリンと同じ色の表紙がもう、かわいいのなんの。ペンとおそろいで持つと、かわいすぎて身もだえてしまいます。そいでもってゴムバンドがピンク。これまた、たまりません。中身も厚手の紙で書きやすい。私が愛読している『NOTE & DIARY STYLE BOOK』最新号で同じメーカーのダイアリーが表紙になっていた。ちょっとうれしい。読モと私物がカブっているのを雑誌で見つけて「おんなじー、おんなじー」と狂喜乱舞する女子中学生読者の気分だYO!

ノート&ダイアリースタイルブック Vol.6 (エイムック 2282)

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