Less Than JOURNAL

女には向かない職業

残業パンダの音楽祭(仮題)

わーい。


NHK音楽祭2013
グスターボ・ドゥダメル指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団ヴェルディ ガラ・コンサート』
@NHKホール 16時〜
マリア・ホセ・シーリ(ソプラノ)
スチュアート・ニール(テノール

おそらく生涯に二度とないであろう『リゴレット』4連発。
あるいは、“野鳥の会”3連発。ともいえる。
まぁ、ちょっと燃え尽きた感はありつつも、ここからはオレの東名阪ボーナス・タイムがはじまります。



「ぼくにとっては、残業タイムでーすヽ(^。^)丿」

ですよね(T_T)。
正直、パンダ働きすぎ! 
若いからと言っても、大売り出し中だからと言っても、
考えてみたら、昨日まで『リゴレット』やってたんですから。
しかも慣れない日本の地で、クセ者軍団を相手に毎日毎日さまざまなアプローチで試行錯誤の連続でしたから。
まぁ、このガラ・コンサートはエキシビションつーか、ちょっと肩の力を抜いたお楽しみ会くらいの
感じでも、オレ的には全然オッケーだったのですが。
そうはいかないのが、パンダのえらいところ。
今日もイタリアのガンコなアルチザンたちと、緊張感あふれる組んずほぐれつを見せてくれました。
アニメかと思うくらいでっかいアメリカーン・テノールのスチュワート・ニールさんと、清楚な愛らしさのマリア・ホセ・シーリさんの歌声も素晴らしかった。

これまで『リゴレット』では野鳥の会メンバーとして、遠くから鳥の巣のようなもじゃもじゃ頭を双眼鏡で眺めてきた私ですが、
本日ついに地上に舞い降りました(`_´)ゞ しかも、7列目中央というベスト・ポジション。

で、今日、私が書きたいことはひとつ。

本日、パンダ・ウォッチャーとしての私による最大の発見:

ドゥダメルの髪型は、だんだんふくらみます。

いやぁ、そういうことだったんか! と、ついに謎が解けました。
最近は天パーをぴっちり撫でつけた、短アフロみたいな髪型(デーブ・スペクター風?)がお気に入りなのかと思っていたが、
いろんな写真を見ていると、前みたいにもじゃもじゃの爆発頭の時もあって、
いったいどーゆー風に髪型を使い分けているのだろうと不思議に思っていた。
で、子供の頃から湿気によって爆発する天敵の天パーに悩まされてきた私としては、
もしかしたら、指揮してるうちにどんどん髪が爆発していくのかもと冗談で言ってたら、まさか、まさか、本当にそうだったとは!
最初、ぺったり頭で登場したので、今日はおしゃれしてきたのかなーと思ったら、指揮しているうちにどんどん髪が乾いて広がってくのです(←わかるわかるー、超わかるー。朝、出かける時にセットしても昼には爆発してるのー)。
かわいいー。
まぁ、「演奏会の最初と最後で髪型が変わる指揮者」というのは、それはそれですごいんじゃないかと。


あ。


でも、ちなみに…………
スカラ座デビューした頃は、こういうひとだったはず……(´・ω・`)。


「クールでハンサムでセクシーな、俊英でーすヽ(^。^)丿」

もはや他人と言っても過言ではないくらい別人なんですけど……。




というわけで。
まぁ、もう、今日は、その髪型の発見だけでも大収穫でしたが(o゜▽゜)o。
名門スカラ座ドゥダメルの関係が、オペラの舞台よりもはっきりと見えたのも面白かった。

連日ずっとナマで聴いてきた私も、本当にスカラ独特の美しい音色の虜になってしまいましたが、
ドゥダメルも、そういうスカラ・サウンドの世界観をとても尊重している。
でも、同時に、もちろん自分の思いというのも当然あるわけで、
オペラの間もちょこちょこ感じていた、その“せめぎあい”みたいなものが
演奏会というかたちではよりはっきりと伝わってきた。

「えいっ!」と振っても、彼が望むようなキレのよさで反応が返ってこなくて空振りした瞬間に、ちょっと背中がガッカリしているのがわかったり(笑)。
けっこうドキドキさせられる場面もあったけど。

お互い探り合いながら続いていた演奏が、フッと調和する瞬間の痛快さや、
オケのスケール感とドゥダメルのダイナミズムがうまく縦軸・横軸になった時の爆発力や……。
このデコボコ感も悪い印象ではなくて、むしろ、そつなくちんまりした演奏よりも全然エキサイティングで面白かった。

スカラの流儀っていうのは、やっぱりかなり独特というか敷居が高いのだなーというのがあらためてよくわかった。そして、そこに向かって、めげずにドッスンドッスン何度も体当たりするドゥダメルの誠実さ、気骨というものにも圧倒された。

なんか、スカラ部屋の新弟子かわいがりっつー感じ。あるいは、愛あふれるぶつかり稽古。というか(笑)。

この人はずっと、こういう風にして世界中のオーケストラを魅了し、信頼関係をつかみ取ってきたのだろうなぁ。


そして。やっぱり、何より、今日も「手」。
ぐっと間近で見た手が、本当に光り輝く美しさだった。
まったくうまくおさまらない天パー髪型とか、パンダみたいな燕尾服とか、そういう現実的なアイテムとはまったく別世界に存在している。別モノ感ハンパない。
あの手はまちがいなく、天上の楽器。その手に握られた指揮棒もキラキラ光り出す。

アンコールで、指揮棒なしで指揮した「カヴァレリア・ルスカティーナ」間奏曲は息をのむような美しさだった。
オーケストラではなく、その指先から音楽が流れ出ているような不思議さ。




しかし、今日いちばんびっくりしたのは、
曲が終わるごとのアプローズでの、
ここまで素っ気ないと無愛想とか不機嫌と言われても仕方ないくらいの、マエストロの素っ気なさ。
どんな時でも、彼はオーケストラを立てて、
「この拍手は、あなたがたのものですよ」
という意思表示として、自分はわりと後ろのほうでちっちゃくなりたがる謙虚な面があるのだが。
それにしても、それにしても、
今回は、何度コンマスに促されても「いいです、いいです。僕はいいんですぅぅぅー」と、
一瞬だけ客席に軽く向き直るだけで、ものすごい勢いでさっさと引っ込んでしまう。
とちゅう、歌姫マリアさんにもぎゅーっと手を引っ張られて、ようやく前に出てきたり。
もう、なんか、遠慮して足早に引っ込むとか、照れてあまり客席を向かないとかのレベルでなく、
「逃げ足が速い」という表現がぴったりの素早さでいなくなる。
ガンコっつーか、コドモっつーか。
今回は特に、ドゥダメルが主役ともいえるコンサートなのだし、
謙虚さはほどほどに、もうちょっとお客さんにお愛想してもいいのに……と思いつつ、
まぁ、なんか、これは先輩方に対するパンダなりの敬意の表し方なのかなと微笑ましく思いました。



終演後、本日が実演ドゥダ・デビューとなった友人Tづかちゃんと、うちの夫をひっぱって「ラ・ボエーム」(←イタリアつながり)になだれこみ、3人でしみじみパンダの凄さについて語り合っちゃいました(o゜▽゜)o。わーい。パンダしゃべり会も楽しかった−。