Less Than JOURNAL

女には向かない職業

続・輝く!日本レコード大将……あらため、ただの備忘録(笑)

 今年は張り切って始めてみたものの、部門賞を考え始めたらグラミー並に細分化してしまったレコード大将。おまけに聴き返していると書きたいことも多くなってきて、この調子でネチネチ更新していたら春になりますわ。なので、当初の予定である部門賞はあきらめました。が、ま、せっかくなので、とりあえず何かしらの大将であるCDをタイトルだけでも並べておこうと思います。

 あ、じぶんには《口だけ大将》をさしあげておきます(o゜▽゜)o。

※【マイルール】いちおう《ひとりにつき、1大将》の原則は、できるだけ遵守の方向でw。


バルトーク:ヴァイオリン協奏曲第1番/第2番》
イザベル・ファウスト(Violin)
ダニエル・ハーディング指揮/スウェーデン放送交響楽団

☆本盤とエラス=カサドのシューベルト、どっちをレコード大将にするか最後まで迷った。これもまた今年すごーくよく聴いていた1枚で、どちらもハルモニア・ムンディ仏からのリリース。しかも、こちらもジャケットが素晴らしい(&インナーや盤面まで素晴らしい)。気鋭のふたり……という雰囲気がよく出ていて、音とジャケがぴったり。これまで森昌子カットのイメージが強かったファウストさんが、渋谷系コケティッシュに見えます。そしてファウストさんによるライナーノーツも、バルトークの魂に触れるほど深く追求した楽曲への思いが伝わってきた!
 それにしても、今年は本当にハーディング様にはお世話になりました。いっぱい聴いたし見たし。スカラ『リゴレット』初日では、オレの斜め前にお座りになられてMajiで恋する2幕前でした。マーラー・チェンバー・オーケストラとの黄金コンビで臨んだ、スティーヴン・イッサーリスドボルザーク集も素晴らしかったのだけど。いちお自分ルールで両方は選べないのでこっちにします。スウェーデン放送響も実に魅力的。シャープでパワフルで盛り上げ上手、まさにハーディングの軍隊っつー感じ。
 今年は自分でもびっくりするほどバルトークを聴いた。まぁ、あくまで《自分比》なので、たいして聴いてませんけどね。もちろん、いまだに全然わかんないですし(嘲笑)。ただ、いろいろ聴いてると、最近、若い世代の演るバルトークの言語感覚というか、そういうのは多少なりとも共感できる瞬間があるなぁと思ったり。そのあたりが面白い。まぁ、気のせいだと思いますが。


ラフマニノフ:ピアノ協奏曲第3番/プロコフィエフ:ピアノ協奏曲第2番》
ユジャ・ワン(Piano)
グスターボ・ドゥダメル指揮/シモン・ボリバル交響楽団

☆今年はドゥダメル関連のリリース、すごかったな。映像・配信あわせたら6タイトルくらいあったのかな。おまけに来日もあったし。まさに旬のスター、という存在感。で、録音、コンサートもろもろ合わせての《ドゥダメル大将》は何だろうと考えると……いやぁ、これは深いわ。いろいろ面白い。でも、どうやら書くとめっちゃ長くなりそう。というか話題として別ジャンルという気がするので日をあらためます。
 これはユジャ・ワンのアイテムでもあるし。なのでドゥダメルだけではないし…ということで、まずは本盤をあげておく。ドゥダメルシモン・ボリバル響コンビとしては、ひとつの集大成というか総決算的なアルバム。そして何より、ドゥダメル&ユジャという2人の若きライジング・スーパースターが互角で勝負しているという華々しさがリアルタイムの記録として耳にできるのは2013年ならではの恩恵なので。あと、あくまで個人的な気持ちの問題なのだが、前述の“ハーディング=ファウストスウェーデン放送響”と“ドゥダメル=ユジャ=シモン・ボリバル響”というのが同じバランスのトライアングルに見える。気鋭のソリストと指揮者、その指揮者にとってホントの意味での“手兵”……。そして、さらに個人的な感慨として、私にとってはこの2枚が並んでいる感じはいろんな意味でものすごく“今年っぽい”。秋にドゥダメル&ハーディング、そして年末には生ユジャも見られた年だったということも含めて。


《リンドベルイ:EXPO/ピアノ協奏曲第2番/Al largo》
イェフィム・ブロンフマン(Piano)
アラン・ギルバート指揮/ニューヨーク・フィルハーモニック

☆思い起こせば、アラン&NYフィル初来日公演で1曲目に演奏されたのがアラン監督就任記念の委嘱作品「EXPO」だった(たしかリンドベルイ氏も来日されていて、紹介されていた記憶が)。でも、当時は私の辞書に現代という文字はなかったので、まぁ、ややこしい曲だなー難しそうだな−くらいしか感想はありませんでしたごめんなさい。が、歳月は流れ、今となっては、リンドベルイとラウスを乗り越えずしてアラン・ギルバートは語れないことがよーくわかってきました。そう。愛のためには現代音楽が必須科目なのです、きゃは(*゜∀゜*)。という意味不明の理由で、来日までヘビロテ必至大将。しかしあれだよ、現代こわいよーこわいよーリンドベルイわかんないよーインテリだよーと苦手意識があるから苦手になるわけでだな。なんだかんだ5年くらいしょっちゅう聴いてるのだから、だんだん好きにもなってくるので……ダイジョウブ(なにが?)。
 で、それはさておき、このアルバムは来年のグラミー賞にノミネートされました。いえーいヽ(^。^)丿 BEST CLASSICAL INSTRUMENTAL SOLO部門だから、対象はブロンフマンさんのピアノということになるのか。ま、ブロンフマンとリンドベルイといえばアランだしね。おめでとうございます。NYP来日公演でも、スリリングでダイナミックなピアノ協奏曲2番が聴ける予定なので楽しみです。


ストラヴィンスキーストコフスキー
ヤニック・ネゼ=セガン指揮/フィラデルフィア管弦楽団
ストラヴィンスキー:バレエ《春の祭典》/パストラーレ(ストコフスキー編曲)J.S.バッハ(ストコフスキー編曲):トッカータとフーガ ニ短調パッサカリアとフーガ ハ短調/小フーガ ト短調

Rite of Spring/Bach Transcriptions

Rite of Spring/Bach Transcriptions

☆1922年にストコフスキー指揮フィラデルフィア管で全米初演された「春の祭典」や、ストコフスキー編曲による「鼻から牛乳(邦題)」などバッハ名曲。ネゼっち率いる新生フィリーによる、フィリーのための、ストコフスキー・トリビュート。オルタナ・カントリーロック育ちなもので、こういうルーツ・リヴィジテッド企画にはジャンルに関係なく無条件で弱い(笑)。自分たち(ここではネゼっちもフィリー管に含む)がどこから来たかを見つめ直して、歴史を作った人々に敬意を表すことで、おのずと未来が見えてくる。ということ。だから、この音は伝統であり旬である。まさしく初期オルタナ・カントリーの手法。大瀧詠一師匠の名言にも「迷った時には墓参り」というのがある。フィリーが財政面以外で迷ってるかどうかはわからないけど、とにかくネゼっちには期待しているのでがんばってほしい。若手指揮者の中ではいちばん、よくも悪くもキャラが立っているし(音楽的にも)。新しいフィリー・サウンドを作ってほしい。


《The VERDI ALBUM》
ヨナス・カウフマン(宇宙一かっこいいテノールジョルジョ・モランディ指揮/パルマ歌劇場管

ヴェルディ・アルバム

ヴェルディ・アルバム

☆今年は久々に、ものすごいカウフマン旋風が吹き荒れた1年だった(※個人の旋風です)。そして今年のカウフマンはワーグナーヴェルディ、それぞれのアリア集を出すという顔に似合わぬ記念日男子みたいな張り切りようで。が、しかし、ワーグナーのほうはさておき、ヴェルディのアリア集は発売前からあまり期待されていなかったような雰囲気はある。しかもよりによってソニー・クラシカル第一弾とは、ソニーがチャレンジャーなのか貧乏くじ引いたのか(ワーグナーだったらテッパンだったのに)。でも私は、ファンとして最高にテンション高い状態でずーっと聴いていたら、意外と新鮮で好きになってヘビロテしていた。歌劇として見るのなら確かにワーグナーのカウフマンは最高だけど、アリア集のCDは別モノ。カウフマンが歌う憂鬱な、濡れたヴェルディ!これまた極上、聴けば聴くほど沁みてくる。とてもセクスィーです。もう、いきなり「女心の歌」からの「清きアイーダ」……て、ポペラのアイドルかってくらいのベタな選曲もまた新鮮。これを歌劇として見るとしたら、また印象は違うとは思うのだが。テッパン曲とか当たり役でないところで見せる表情も新鮮な、意外性が味わい深いヘビロテ大将。


《WALKING FIRE》
ブルックリン・ライダー
リョーバ:Culai/バルトーク弦楽四重奏曲第2番/ジェイコブセン:弦楽四重奏のための3つの小品

Walking Fire

Walking Fire

☆今もなお“ゴート・ロデオ・セッションズ”が素晴らしすぎて完璧すぎて、このジャンルというかポジションとして“次”のものはないかとずっと探してはいるのだけど見つからない。もう、彼らが再結集してくれない限り“次”は理論的にも人材的にも不可能なのかもしれないなぁ。と、先日WOWOWで突如ゴート・ロデオのライヴが放映されたのを見ながら思った。最近、マさんのシルクロード・アンサンブルも久々の新作をリリースしたが、それはそれで別モノだし。と、なんとなく、未練たらたら状態で、あの音楽性そのままとは言わないが、ちょっとでもゴート・ロデオ・セッションズ的なときめきの一瞬を味わえるような音楽との出会いを探す旅は今も続いている。で、そんなこともあって、アメリカ系の現代音楽なども気にするようになってから知ったのがブルックリン・ライダー。本盤に関しては、完全にジャケ買い。ていうか、これって絶対クラシックと思わない。ジャケもグループ名も(ついでにオフィシャルサイトも!)ブルックリン系インディー・ロックかと思ってしまう。すっかりハマって、あわてて全アルバムさかのぼりました。カッコいい。本人たちの見た目も、クラシック界のパンチ・ブラザーズ的な雰囲気で。そもそも、彼らは件のシルクロード・アンサンブルで長年活躍してきたメンバーでもある。本盤では、バルトークとメンバーのエリック・ヤコブセン作品をカップリング。かなり自作自演系。そして、ここのところベラ・フレックと一緒にツアーしたりしている(ちょっと接点キターーーー!)。というわけで、かなりクールですが注目中。そういえば、しばらく前にユジャ・ワンが「初めてLe Poisson Rougeに来た!」とツイートしている写真を見たら、まさにブルックリン・ライダー&ベラ・フレックのライヴ風景だった。


そして最後に……【輝く!日本DVD大将】
ヴェルディ:レクイエム》
グスターボ・ドゥダメル指揮/ロサンゼルス・フィルハーモニー管弦楽団
ジュリアナ・ディ・ジャコモ(ソプラノ)/ミシェル・デ・ヤング(メゾ・ソプラノ)/ヴィットリオ・グリゴーロ(テノール)/イルデブランド・ダルカンジェロ(バス)/LAマスター・コラール(合唱指揮:グラント・ガーション)

Messa Da Requiem [Blu-ray] [Import]

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☆いちお原則ルールでは《ひとり1大将》ですが。CDじゃなくてDVDだし。まぁ、パンダちゃんはあらゆる意味で例外だし。まぁ、今、すべてのクラシックの音楽家の中でいちばんドゥダメルが好きで、今年の1枚をベルリン・フィルとのツァラでもなくユジャでもなく、LAフィルといってもマラ5でもなくコレだっていう人がいても、なかなか珍しくていいんじゃないの。とも思いつつ。ティーレマンベートーヴェンみたいな、考えオチの特殊な解釈みたいなものかもしれないけど(笑)。
コンサートや中継ではなく“音盤”に限って、そして名演とか代表作とかいうのとはちょっと違う《今年のドゥダメル大将》を選ぶとしたら。ものすごく悩むけど、私はこれかなぁ。ドゥダメルという人そのものを、今、いちばんハッキリと見せてくれる作品という意味で。たぶん。と、今のところは思っています。そんなこんなの話題もまじえて、ドゥダメルについてはまたあらためて書きたいと思います(その時にはまた違うこと言うかもしれないけど)。