Less Than JOURNAL

女には向かない職業

祝・主演女優賞〜トニー賞雑感など〜

ブロードウェイでのナマの舞台が対象なだけに、当然のことながら日本で旬のものが見られる可能性はゼロに近いという矛盾を抱えつつも細々とBSで放送されてきたトニー賞。でも、今年はついにWOWOWで生中継。快挙ですよ。まぁ、ひとつだけ、Aもん氏が何かと鬼才マイケル・メイヤーと自分を並べたがる(しかも、そういう風に言われたんですー……という間接話法を使って)アピールに関しては、まぁ、そこだけはね、あくまで個人の感想として賛同しかねるっつーだけの話なんですが。もう、メトロポリタンオペラの「リゴレット」中継の時から気になっておるもので(笑)。ま、それはそれとして。生中継は快挙(字幕版は14日放送)。さすが多くの演劇/ミュージカル中継を手がけるWOWOW。日本ではまったく知られていない人々がこれだけたくさん出るアワードという難しさを踏まえた上で、ここまで頑張って盛り上げている情熱が伝わってきた。ゲストのさやかちゃんと王子様の、ミュージカル舞台人ならではの視点での感想も面白かった。これがブロードウェイの憧れだけでなく、日本の演劇界の活気にもつながるものになればいいなと思いました。

で。

『BEAUTIFUL』です!

やった、やった、やりましたよ!

ジェシー・ミューラーさん、ミュージカル部門主演女優賞おめでとう\(^o^)/

今年4月に初めて舞台を見て以来、すっかり『BEAUTIFUL』というミュージカルの宣伝部長のようにたくさんのコメントを残しているキャロル・キングねえさんご本人も登場。最初に自伝のミュージカル化が決まった時には、あまりにもつらい思い出が描かれた内容にいたたまれずミーティングの場を途中退席してまったということや、ずっと見るのが辛かったという話、それでも4月に初めて舞台を見た時にキャストたちの熱演に心を動かされて大ファンになったこと……などを率直にスピーチ。キャストたちのパフォーマンスにも飛び入りして、ジェシーちゃんと“ふたりのキャロル”の歌声を聞かせた。

あ、ちなみに3月の観劇日記は、当ブログ4月24日をご覧ください。

作品賞をはじめ7部門にノミネートされた『BEAUTIFUL』、結果は主演女優賞とサウンドデザインの2部門で受賞。まぁ、あわよくば作品賞も……と願ってはいたけれど、ダークホース的な感じでぐんぐん伸びてここまで来られたことだけで最高に素晴らしい結果だったということでしょう。何よりも、ノミネートの中でも主演女優賞が受賞したというのがよかった。キャロルさんにとっても、たぶんいちばん受賞してほしかった部門だったのではないだろうか。ジェシーちゃんの受賞は“キャロル・キング”の受賞。放送後の2ショット写真でも、ふたりのキャロルはとても幸せそうな笑顔だった。

ジェシー・ミューラーが無名の大抜擢だったようなことが番組内でも言われていたし、私もこの舞台で初めて彼女の名を認識したわけだけど。Misoppa's Band Wagonを主宰するミソッパ氏によれば、以前ハリー・コニックJr.主演の舞台『晴れた日に永遠が見える』に出演していたジェシーちゃんが素晴らしかったそうで、『BEAUTIFUL』が始まった時にも彼女の主演ということでも期待していたそう。もともとクロート筋や舞台好きの間では評価が高い実力派の逸材だったようだ。

で。

放送が終わってからニューヨークフィルがFBでおめでとうコメントを投稿していたので初めて知ったのだけど。ジェシーちゃんは去年3月にニューヨーク・フィルが音楽劇としておこなったロジャース&ハマースタインの『回転木馬』にも出演していた!

So happy for our Broadway friends who brought home gold at last night’s ‪#tonyawards‬. Kudos to Neil Patrick Harris (who was in our 2000 Sweeney Todd and 2011 Company), Jessie Mueller (Carousel, 2013), and Audra McDonald (Sweeney 2000 & 2014, the latter being aired on PBS Sept. 26). We are proud to call you friends!

(NYフィルのFacebookより)


で、『ヘドウィグ・アンド・アングリー・インチ』でミュージカル部門主演男優賞を受賞したニール・パトリック・ハリスも、NYフィルの『スウィーニー・トッド』や『カンパニー!』に出演してるし。今回、6度目のトニー賞である上に、これで“女優”としての受賞部門はすべて獲ってしまったという昨夜のナダルばりの快挙を成し遂げたオードラ・マクドナルドもNYフィルの音楽劇やガラの常連。アラン・ギルバートの友人でもあり、アランはウォール・ストリート・ジャーナルでのアンケートで《今春、楽しみな舞台》として今回の受賞作品『LADY DAY AT EMERSON'S BAR & GRILL』を挙げていた。あと、授賞式のオープニングでパフォーマンスも披露した、作品賞ノミネートの『AFTER MIDNIGHT』にしてもウイントン・マルサリス率いるジャズ・アット・リンカーン・センターのオーケストラによる舞台なわけだし。

いやぁ、やっぱりつながってるわ。こういう視点で見ると、ニューヨーク・フィルとブロードウェイの縁の深さがよくわかる。まぁ、近所だから、実力派はあちこちから声がかかるのは当然……といえば、まぁ、それまでだけど。この、どうしてもつながってしまう感は、やっぱりニューヨークならでは。当ブログ(修学旅行編w)でもしつこく書いてきたように、文化としての地続き感を実感してしまう次第。

と、結局、また我田引水で着地してしまいました( ̄∇ ̄)。

て、ニューヨークフィルが我田というわけではありませんがね。まぁ、できることならニューヨークフィルという田んぼの小作人になりてぇですが。うっしっし(*´ェ`*)←意味不明。

ただし、まぁ、オードラ・マクドナルドは絶対に獲ると思ったよ。なんたって、今年のMusical Americaのミュージシャン・オブ・ザ・イヤーだもの。去年はドゥダメルだった枠。えこひーき枠、という意味ではなくて。たとえばファッション業界でいう「今年の流行は、花柄&ズボン丈は8分でね」的な、業界全体の指針というか目印というかベンチマークつーかランドマークに選ばれたってことだし。言うまでもなく、その役割にふさわしい才能だし。彼女のスタンスというものがこういう、誰からもよく見える場所で評価されてこそ米ショービズ界。当然のことだなと思っていたわけです。にわか業界紙つまみ読みアナリストとしては(笑)。

ジェシー・ミューラーはじめ、オリジナル・キャストによるサントラ。

Beautiful: The Carole King Musical

Beautiful: The Carole King Musical

なんと〜! アナログも出ました!

Obr: Beautiful: the Carole Kin [12 inch Analog]

Obr: Beautiful: the Carole Kin [12 inch Analog]