NYタイムズは、いつでもグスたんの味方さ。

ニューヨーク・タイムズ(マガジン)のグスターボ・ドゥダメル記事がとても素晴らしかった。と言いつつ、ものすごく長いのでまだナナメ読みなので、ちゃんと読んであらめてご紹介できたらと思っている。

 

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これはごくごく個人的な思いなのですが、最近、審査員目線というか減点法というか、「評論」ではなく「評価」に近い音楽評論の“誰目線?”的つまらなさについてよく考える。そのひと自身が音楽に触れた瞬間の歓喜(あるいは怒りでもいいけど)が伝わってこない文章は、いくら見識豊かであっても、あるいはいくらわかりやすく書かれているとしても、心には響かない。あなた自身にその音楽は何をしてくれたのか、その音楽にどんな風に聞こえたのか、あなたの心はどう反応したのかを教えてください…と思う。論文はクロウトさんには面白いのかもしれないが、シロウトさんには何の手がかりにもならない。業界人であろうが、そうでなかろうが、プロの記事であろうがシロウトの呟きであろうが、自分が何かを感じたかを「言わない」(あるいは言えない)文章がどうも苦手だ。というか、そういう人には自分も心を開きたくない。誰の顔色を伺っているのか、どこに忖度しているのかわからない“褒められない”人が苦手だ。価値観は人それぞれなので、否定でも批判でもない。ただ、私自身は子供の頃から「みんながいいっつーからいい」という多数決原理主義が大嫌いで、同調圧力に負けっぱなしで育ってきたから今も苦手なのだと思う。私は、その音楽の素晴らしさについて誰かに教えたくてたまらないひとが紹介してくれる文章が好きだ。未来のことでもなく、過去のことでもなく、今、そのひとと音楽とが1対1で向き合っているのが伝わってくる文章が好きだ。できることなら、自分もそんなふうに書きたいなといつもずっと願っている。感じたことを言葉にするのは、なかなか難しいですが。ドゥダメルとLAフィルについて書かれたこの記事には正確なデータがあって、分析があって、本人の言葉があって、そして何よりも記事を執筆したひとのまなざしが見える。書き手の好奇心と、音楽への敬意と、素直な人物観察力と、ドゥダメルに対する思いが文章化されている。

 

それにしても、グスたんが元気そうでよかった。

 

その人の中に生きている音楽は、命ある限り誰も奪うことができないのだ。

 

そして、全米でいちばん給料が高いオーケストラがLAフィルというのは知っていたけど、ホントに高いわー、とびっくりした。と、そういうゲスな好奇心もちょっとくすぐられる記事でした。だって、グスたんの給料はジャストオンリー3億ドルですって奥様! でも、確かにディズニーという大きな看板があることも大きいのかもしれないけど、それにしてもジャンルの壁を超越して“音楽を伝える”というミッションを全身全霊でやってきて、次の世代の育成についても全米、あるいは世界のお手本になるようオーケストラぐるみで取り組んできた音楽家集団なのだから当然のこと。そういえば、LAフィルのヴァイオリニストで、NPOプログラム“ストリート・シンフォニー”のアーティスティック・ディレクターでもあるヴィジェイ・グプタさんは今年のマッカーサー・フェローを受賞した。グプタさんはTEDスピーカーとしても有名なソーシャライツでもあり、個人としてのさまざまな活動が評価されての受賞ではあるけれど、オーケストラ団員からアメリカのヤング・ノーベル賞と呼ばれるマッカーサー・フェローの受賞者が出るというのはすごいことだ。マッカーサー・フェローについては、前々からいつかグスたんも受賞するのではと思っていたが、もう、そういう段階も超越しちゃったね。いっそもう、ノーベル賞とかお願いします(←誰目線?)。

ところで。

ちょっと前のことだけど、グスたんが自ら選曲した(らしい)ラテン・アメリカのクラシカル音楽プレイリストが公開された。あのねグスたん、渚のカセットじゃないんだから、もうちょっと長くてもいいんだよ……と言いたくもなる全8曲47分。でも、なかなかよい感じで、けっこう愛聴させていただいてます。ヒナステラやヴィラロボスはもちろんのこと、ゴリホフまで入っているのはヨーヨー先輩もお喜びでしょう。

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