Less Than JOURNAL

女には向かない職業

バレットジャーナル/Bullet Journalオフィシャル・ブック

 セミの鳴いている頃には、すでに英国より2019年のスケジュール帳をお取り寄せしていたことは以前にも書いた。まぁ、そのことは自分でもアホを承知の毎年の儀式みたいなものなので。しかしまぁ、最近の手帳ブームはもっとすごい、セミが鳴き始める前からロフトやハンズでは手帳まつりが始まっている。しかも4月始まりだの9月始まりだの何月始まりだの、いろいろあるので1年じゅう手帳まつりだ。

 とはいえ、もう、今さら手帳にこだわって仕事も恋もバリバリとか、会議の席でさりげなく開く手帳でライバルを威嚇したいとか、そういうポジティブでクリエイティブな文具欲でむらむらする年齢でもない。潔くそこらの紙切れに書きなぐった予定をポケットにねじこんでおく、みたいなハードボイルドにも憧れる。とはいえ、やっぱり、いちど身についてしまった習性はなかなか抜けないものだ。ポケットサイズの手帳の他に、細々といろいろ書き込む大きなダイアリーはないと困る。結局やっぱり今年も、来年のダイアリーはどうしようかしらと考えている。

 

 でも、一昨年の夏くらいからは、アメリカで始まって世界的に広まった“Bullet Journal(バレット/ブリット・ジャーナル)”という自由度の高い手帳術が気に入って、そのままずっと続けている。なので、たぶん来年もそのまま継続の予定。

 ちなみに、日本では“バレットジャーナル”と表記されるのがスタンダードだが、“弾丸”の“Bullet”なので“ブリット・ジャーナル”と呼ぶほうがしっくりくる気はする。でも、定着している表記以外を使うとややこしいので、とりあえず便宜上“バレットジャーナル”に統一してみます(また直しちゃうかもしれないけど)。個人的にはひそかに“ブリット”派ということで。

 

 バレットジャーナルがどういうものかという説明は長くなるので省略しますが。もともと“Bullet”とは《弾丸》の意味があり、To Doリストの頭につけた《・》=“弾丸”を《×》で消してゆくというわけ。が、それだけではなく、バレットジャーナルは人それぞれいろんな使い方ができる。SNSの"#bujo"を検索すると全世界のユーザーたちが載せている可愛かったり芸術的だったり機能的だったりするいろんなページが出てきます。ただ、SNSには本当にアート作品級のページがたくさんあるのと、なんとなく“インスタ映え”ブームも相まって、いわゆる女子力高い系あるいは意識高い系のビジュアル系ダイアリー=バレットジャーナル、みたいなイメージが強くなっちゃってますけど。基本的には《To Doリスト+月間&年間スケジュール帳+日記》をふつうのノート1冊とペン1本でまかなえる、とても効率のよいノート術。そして自分で自由にページ割をできるので、ふつうダイアリー/手帳選びでいちばん迷うデイリーかウィークリーか……という選択も必要なく、1日で3ページになってもいいし3日で1ページになってもいい。芸術的なノートも作れるけど、実用的でビジネスライクなスケジュール管理にも使えるし、日記にもなる。そういう自由さが、とても自分には合っていたみたい。

 もともと、小型のスケジュール帳+B6版のデイリーダイアリー+A5ノートとデフォルトで3冊を持ち、さらにはTo Doリストも机にベタベタ貼って……というカオスな環境の中で、できることならすべてのことをノート1冊にまとめられないかとずっと思っていた私にとっては、「どういうノートを使うか」ではなくて「ノートをどう使うか」というバレットジャーナルはもう、これ以外の正解は考えられないくらいの最強の正解に出会った!と思った(て、日本語おかしいですが)。

 

 バレットジャーナルは、発案者であるライダー・キャロル氏が2014年にキックスターターで資金を集めて立ち上げた公式コミュニティ・サイトを中心に、SNS時代ならではのアイディアのシェアなど《集合知》によって発展してきた。が、この秋、ついに、キャロル氏による初のオフィシャル・ブックが発売された。

 

f:id:LessThanZero:20181208181129j:plain

 

 これは米国版。キャロル氏はもともとニューヨークでデジタルゲームやアプリ、ウェブサイトのデザイナーだったので、この表紙もご本人のアート・ディレクションによるもの。発売前に写真で見た時には、なんつーか、男前クラシック・ロックのベスト盤のジャケットみたいだなー(笑)くらいに思ってたのですが。すんません。届いてみたら、キラッキラしてて、本当にめちゃ美しい表紙なんです。クラシック・ロックというより、90年代黄金期ダナ・キャランみたいな。セレブでシック&ゴージャスな感じ。同じ表紙のノートがついたスペシャル・エディションもあったんだけど、そっちにすればよかったなー。

 

 ちなみに、最近知ったのだけれど、キャロル氏の父は『死者の書』などで知られるSF/ファンタジー作家のジョナサン・キャロル氏。

 

死者の書 (創元推理文庫)

死者の書 (創元推理文庫)

 

 

 そして、父の異父兄にあたるのが、なんとスティーヴ・ライヒ

Pulse/Quartet

Pulse/Quartet

 

  わーい、ちょっとノンサッチつながりだ(*゜∀゜*)。

 

 そして、話は公式ブックに戻る。

 ステキな表紙を開くと、見返しはコレ。

f:id:LessThanZero:20181024134854j:plain

 バレットジャーナルのユーザーなら、これだけでもうニマニマしてしまうはず。

 このとか-とか<とか>とか!

 わからない人には何のことやらですが、わかる人には胸キュンのこだわり。とにかく、すみずみまで凝っている。これはもう、バレットジャーナルのロゼッタ・ストーンやぁぁぁ。みたいな。愛情たっぷり。

 

 私は、文豪とか芸能人とかでなくても、とにかく自分以外の誰かの書いた直筆フェチで、実用書というよりも画集とか写真集を買う気分で手帳特集の雑誌とかノート術の本を買ってしまう人間なのですが……そんなわたしが大・興・奮。

 

f:id:LessThanZero:20181024135129j:plain

 まぁ、やっぱし、信者としてもキャロル氏の直筆によるノートは眼福!

 この、ドット罫に細字ペンでちびちび丁寧にオタクっぽい几帳面な字で書いてゆくというのが……もう、カッコいいなー。あこがれるー。つい、自分の手帳も英語で書いてみたくなる。

 

 あ、ちなみにBuJo信者なので電車の中で読む用にKindle版も買ったのですが。まぁ、電子版もあれば便利ではあるものの、やはりデザイナーであるキャロル氏の本は紙版を手にとってこそ真髄に触れられるというもの。

 たとえば、上の手書きページの写真はKindleではこういう風↓になります。

f:id:LessThanZero:20181209005158p:plain

 ねー、これだとあんまりワクワクしない。

 

 もし、これを見てバレットジャーナルを始めてみたい方がいるとしたら、ノート1冊とペン1本があればすぐに始められるのでぜひお試しを。コクヨの大学ノートでもスマイソンの金箔手帳でも、自分が書きやすければノートは何でもOK。でも、実際に使ってみて思うのは、ノートは方眼罫またはドット罫が使いやすいかな。まぁ、個人的な感覚なので、そこは人それぞれとは思うのですが。

 《・》とかマークを書きやすいし、他にもいろいろ自由度が高いのでバレットジャーナルにはドット罫ノートが推奨されていて、最近はロフトやハンズや伊東屋でふつうに売ってるロイヒトトゥルムでは、唯一の“バレットジャーナル”ロゴ入り公認ノートも出ていたりする。ちょっとお高いけど。

 

ロイヒトトゥルム ノート A5 ドット方眼 ブラック 329398

ロイヒトトゥルム ノート A5 ドット方眼 ブラック 329398

 

  この「ノートは何でもOK」というルールもまた、現在、通称「文房具長屋」と呼ばれる、使いきれない未使用ノートに埋もれた老後を過ごすんじゃないかと本気で心配されているよーな部屋に暮らすワタクシの心をとらえたわけです。何でもOKなら、これまで国内外で買いためたもののもったいなくて使えなかった素敵ノートの数々を消費するのにも絶好の機会ではないか!

 

 でもね、「文房具」って書いて「煩悩」と読むのよ。

 

f:id:LessThanZero:20181113194405j:plain

 ああー、煩悩。

 ファンシー&実用的文房具といえば、日本の次にイギリスがすごいと思う。バレットジャーナルの流行で、こんなかわいいノートも出てますのよ。ドット罫で、インデックスページなどもある完全なバレット・ジャーナル仕様。日本で買えないんで、辛抱たまらずイギリスからお取り寄せますた。何が「未使用ノートの消費」だ、と自分で自分を叱責してやりたい。あははははー。泣。

 

 ところで、この公式本『THE BULLET JOURNAL METHOD』。今のところ日本語版は出ていないようなのですが、日本でも独自のハウトゥ本はたくさん出ているし、文房具屋でもバレットジャーナルやってみようコーナーができるくらいなので、近いうちに日本版出るといいな。タイトルにもあるように、バレットジャーナルにできることは《Track the past /Order the present/ Design the future》。《文房具による瞑想》とでも申しましょうか、ある意味、非常に哲学的なメソッドでもあるので、そのことについての深い考察と、キャロルさんやユーザーたちの体験談が織り込まれた本書は単なる実用書ではなくセルフヘルプ本としても素晴らしいと思う。

 

↓米国版なのですが、なぜかKindle版しか出てこない(;´Д`)!?

The Bullet Journal Method: Track the Past, Order the Present, Design the Future (English Edition)

The Bullet Journal Method: Track the Past, Order the Present, Design the Future (English Edition)

 

 ↓英国版。こちらの表紙もキュート。

The Bullet Journal Method: Track Your Past, Order Your Present, Plan Your Future

The Bullet Journal Method: Track Your Past, Order Your Present, Plan Your Future