Less Than JOURNAL

女には向かない職業

牛歩速報:Paul Simon: The Lifeを読み始めました

 読み終わるまで100年かかりそうで恥ずかしいので世間にはナイショにしておこうと思っていたが、ポール・サイモン初の公式評伝を読み始めた。著者はジョニー・キャッシュのバイオ本を書いたロバート・ヒルバーンで、これまで「絶対に自伝は出さない」と言い続けてきたポールがキャッシュの本を読んでヒルバーンを指名。60時間以上にわたるインタビューがおこなわれたという本書は、とてもとても面白いのだけれども英語なのでちびちびとしか進まないのがもどかしい(自分が悪い)。

 で、今ちょうど、ポールがクイーンズカレッジ時代に恩師に連れられて、カーネギーホールで開かれた20世紀の作曲家を称えるガラに行ったくだりを読んでいて。なんと、その時に晩年のエドガー・ヴァレーズを恩師に紹介されて話もしているらしい。というわけで、こういうことはちょっとメモっておかねば自分でも忘れてしまう(なにせまだ第1章)と思い、備忘録的に感想メモ。

 ポールは当時、恩師の「20世紀の音楽とアメリカ文化」という講義に感銘を受け、さらにはヴァレーズに会い、電子音楽の父でもある彼がいかに幅広いジャンルの音楽に影響を与えているかを知り、当時ティンパンアレイ・ポップスへの未練とフォークムーブメントへの興味の挾間で苦悩していた自分の悩みは、大きな音楽地図の中ではいかに小さなものかと思うに至ったとか。だから、このカーネギーでの出来事はポールの歴史の中でも重要なトピックのひとつになったみたいだ(本人説)。ヴァレーズといえば、神再発でおなじみヴァレーズサラバンド・レーベルの語源の人ということで、現代音楽ファンのみならず米国ポピュラー音楽好きにもよく知られておりますが。そう思うと、サイモン&ガーファンクルでヴァレーズの代表作と同じタイトルの「アメリカ」という曲を歌ったことも興味深いし、クラシックまで含めた大きな意味での米国音楽という枠組の中で考えた場合にも、ポール・サイモンはキーパーソンとして意識してよいのではと思ったり。そして、彼が今回のラスト・ツアーでチェンバーアンサンブルyMusicを起用したこともまた、大学時代の経験から時を経て……というストーリーの中でのin currentな出来事とこじつけることができそう。

 そして、まぁ、それでもあとひとつだけどうしても個人的見解として加えておきたいのは、おそらく若者だったポールを勇気づけ励ましてくれたであろうヴァレーズ巨匠に対して、後年、すでに大スターとなったポールをパーティで「アル」と呼びつづけた失敬なオッサンことブーレーズにはさぞやむかついたのであろうなーとあらためて思う次第(ソンナポールガダイスキ♡)。

Paul Simon: The Life

Paul Simon: The Life