Less Than JOURNAL

女には向かない職業

傘ジャケに駄作なし。

雨の降る日は、傘のレコ。

いや、それにしても今日はひどい雨と風だった。

こんな日に、ようやく帰宅したのにまた雨の歌かよ……という話題ではないのでご安心を。
雨の歌じゃなくて、傘のレコ。なのである。
最近、ふと思いたって「傘ジャケレコ」研究をはじめたのだが、
これはまじで、けっこう深い。おもしろい。

傘ジャケの名盤含有率は、おそらく他ジャンルのジャケに比べて確実に3割以上は高い。

まじで。まじで。

そんなわけで、つつしんで発表させていただきます。

これが、眺めてよし聴いてよしの総合評価で選出されました……


【全米3大傘ジャケ】


でございます(*゜∀゜*)



ね。素敵でしょ。
オールジャケ買い推奨です。


いちばん上は、スザンナ・ホフスの最新作『Someday』(2012)。
ミッチェル・フルームをプロデュースに迎えての、実に16年ぶりとなるニュー・アルバム。
オリジナル・リリースは昨年だが、日本盤は出たばかりだし話題にもなりましたのでね、
まぁ、ここでは細かい説明は省きますが。
それにしてもホフスねえさんの、この美貌にはまいりました。奇跡の53歳。
ルックス的には、バングルスからソロになった頃とほとんど変わらないのでは?
ソロになったばかりの頃に一度だけ取材したことがあって、
もう、なんだかバービー人形そのままみたいな風貌で、こりゃ某Pサマも惚れるわと納得したものだ。
音楽のほうも、まさに、こういう雰囲気。大人カワイイ魅力のポップ・ワールド。
60'sミュージックをテーマにした、ノスタルジックで可愛らしくもモダンでシックで。
大人っぽいけどオバハンくさくなくて、可愛いけど若作りっぽくもない。
今の年齢だからこそできる音楽というものを、なんとも上手にやってみせたなと思う。


真ん中は、個人的に今年のポップ・カントリー系ではイチ押しのシンガー・ソングライター
ナッシュヴィルを中心に活動しているアシュレイ・モンロー。
この作品は実質2作目だが、CDフォーマットとしては初アルバムとなる『Like A Rose』(2013)。
3月に発売されてカントリーチャートでは最高10位、全米でも43位となかなかの好評で嬉しい。
とにかく、彼女は声がいいのです。素晴らしい。惚れてます。
パッと聞きでは、声質がドリー・パートンそっくり。
そこにパッツィー・クライン的せつなさとか、リンダ・ロンシュタットっぽいポップ感とかいろんなエッセンスが加わって。
まぁ、あまりにもドリー似と言われることは悩みでもあるようで、アルバムではそういうのをちょっと皮肉った歌もあったりするのだが……
音楽的にはまったく違うので問題なし。言うこと茄子。
がつんとした歯ごたえと、フワフワ綿菓子みたいな甘さとの絶妙なバランス感がすばらしい。
もともと彼女はミランダ・ランバートと長年の親友で、
実は、ミランダとアンジャリーナ・プレスリーとで結成したガールズ・トリオ《ピストル・アニーズ》のメンバーでもある。
私は、ピストル・アニーズで初めて彼女の存在を知ったのだが、
実際、あの活動をきっかけにソロとしての注目度もぐっと上がったようだ。
他にもジャック・ホワイトのThird Manレーベルのハウスバンドにも参加していて、
ワンダ・ジャクソンがThird Manから出したアルバムでも何曲か彼女らしいバッキング・ヴォーカルを聴かせている。


そして、いちばん下はちょっぴり懐かしい!ナンシー・グリフィス、1989年の『Storms』。
このアルバムは、私の傘ジャケの原点(笑)。
発売当時、雨の日に六本木のWAVEで見つけたアナログ盤。一目惚れジャケ買いした。
とにかくジャケットが大好きで大好きで。当時、ずーっと机の上に飾っていた。
レトロな傘とスーツ、髪型、ちょっと不安げなまなざし、セピアな色調……美しい。
眺めていて飽きない。私のオールタイム傘ジャケ第一位。
プロデュースはグリン・ジョンズで、それまでのカントリー・フォーク路線からポップ寄りに変わりつつある過渡期の作品。
確かにフォーキー過ぎずカントリー過ぎず、しかも80年代ポップスの匂いもあり。
彼女のディスコグラフィーの中ではちょっと中途半端な作品という評価があるのもわかる。
が、ポップといってもバーニー・レドンとか、アルバート・リーとか、フィル・エヴァリーが参加しているし。
とりわけ私にとっては、当時ちょうどポップ・カントリーをいろいろ聴き始めた頃だったので、
ものすごく聴きやすいというか。ジャスト・フィットな匙加減のサウンドだと感じていた。
で、最近久しぶりに聴いてみたのだが、けっこう今の時代のほうが合ってるような気もする。
80年代モノっぽいけど、悪い意味での古さはあまり感じないし。
今後、あらためて再評価されてもいい作品だと思う。

Someday

Someday

Like a Rose

Like a Rose

Storms

Storms

世でおなじみの豆知識に「アメリカ人は、雨が降っても傘をささない」というものがある。
まぁ、実際、別に、全然さすんですけどね。
ただ、雨が多い日本に住んでいたって「傘」というのは積極的に楽しいアイテムではなく、
やっぱ雨が降って濡れるのは憂鬱だし、わざわざ傘なる道具で雨を防ぐのは面倒なわけで。
ましてや、楽しいレイングッズなども少ない米国で傘をさすってのは、ねぇ。
クルマ社会だから、かわいい傘で長距離を歩くということも少ないし。
アメリカ人にしたら、傘なんてミニ移動屋根くらいの感じですよ(注:そんなことはありません)。
ミュージカル『雨に唄えば』だって、別に雨が降って嬉しい話ではなくて。
むしろ、雨が降っても唄っちゃうくらい楽しいんだよー。という、楽しさエクストリーム状態の比喩なわけだし。

なのに。
ここぞの晴れ姿をお見せするべきアルバム・ジャケットで傘をさすとはどういうことか。
と、思いませんか?
そこにはなにか、「傘」があらわす深層心理がある。
手放しでは喜べない、ちょっとしたせつなさとか。
面倒くさいことの中に見つける、そこにしかない幸せとか。
雨が降っても、自分は平常心のままでいるぞという覚悟とか。
なにか、ある。
そうでなければ、傘ジャケ・アルバムというものが、ここまでことごとく素晴らしい
という事実の説明がつかないではないか。

と、雨が降る日は今なお傘ジャケ研究に没頭する私なのでありました。
そのうち、もう少しロマンティックな結論を導き出したいものです。