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女には向かない職業

『リゴレット』3日目〜パンダとホルヘと神南で〜

【じぶんあんぽんたんメモ第5弾 ひきつづきノークレームノークエスチョンでお願いします】

ミラノ・スカラ座 ヴェルディ作曲『リゴレット
指揮:グスターボ・ドゥダメル
演出:ジルベール・デフロ
@NHKホール 18時30分

オレのスカラ座まつり5日目。
そして『リゴレット』、はやくも3日目。
最初、さすがに『リゴレット』4回は飽きるだろうと思ったが。
さすがに100年以上ロングランしてる演目は違うわ。ぜんぜん飽きません。
ひとつひとつの公演も素晴らしいのだが、
続けて見ていると、発見いっぱい。
ちょっと細かいところを変えてきたり、いやぁ、やっぱりドゥダメルすごい。
ぐんぐんあげてきた、か。
2日目は、平日の昼間という日程もあってかお客さんもパッと見で年齢層高そう、
ロビーが「ふたりのビッグショー」の公録?みたいな雰囲気だったけど。
今日は若いお客さんも多めだった印象で、ほぼ満員。盛り上がってきた!


今回の『リゴレット』の花形は、なんといってもタイトルロールを演じるレオ・ヌッチさん。
スカラの歴史を背負う看板歌手であり、まちがいなく今、世界最高のリゴレット歌いでもある。
齢70を超えてなお朗々と冴え渡るバリトン……でも、さすがに年齢的にそろそろオペラ舞台勇退の噂もあり、
日本で見られるヌッチさんの『リゴレット』は今回で最後だろうとも言われている。
初日、2日目とヌッチさんのバリトンを堪能した。
もう、本当に、一瞬一瞬が素晴らしくて。この空間に自分がいられる幸福をしみじみかみしめた。
歴史を作ってきたヌッチさんと、これから歴史を背負っていかねばならないドゥダメルが、
それぞれの“今”に対する敬意と愛、時に恐ろしいほどの緊張感をもってひとつの舞台を作るのを目撃できた幸運にも感謝。


そのヌッチ版リゴレットとは別ベクトルで楽しみにしていたのが、
この1公演のみゲオルグ・ガグニーゼがリゴレットを演じる3日目の舞台。
ドゥダメルが指揮した昨シーズンの『リゴレット』にヌッチさんは出演していないが、ガグニーゼはWキャストで出演しているし。ザ・ヌッチ一座の座長公演とはまた異なる雰囲気になるのだろう、と期待していた。



グルジア出身、George Gagnidzeです。メトでもリゴレットを歌わせていただきました」





「ホルヘさん、おひさしぶりですーヽ(^。^)丿」






「パンダ、何度言ったらわかる。Jorgeじゃねぇ、Georgeだ。てか、ゲオルグだ( ̄△ ̄)」





ヌッチさんのリゴレットが、森繁の『屋根の上のバイオリン弾き』だとしたら、
オルグさんは谷啓西田敏行の……という感じ。
ちょっと柔らかい雰囲気の声がハンプティ・ダンプティ体型と相まって、
優しさの中からじわじわ哀しさがしみ出てくるような、
しかたなく「しがない道化」をやってる感じがせつない。
ヌッチさんの、凄まじく哀しい存在感とはまた全然違う魅力。

初日にもジルダを演じたエレーナ・モシュクの、はかなくて清らかな雰囲気とも
合っていた。見た目は全然違うけど、このふたり親子なんだなーって感じ。


マントヴァ公のフランチェスコデムーロは、初日に聴いた時には、パワフルなぶん、
ちょっとキンキンしすぎてるかなと感じたところが、今日はぐっと柔らかくて、
色っぽさも増していたような印象。


この日のメンバーでの四重唱、ものすごくよかった。
めちゃめちゃキレのいい演奏とのバランスも、
ドゥダメルリゴレットらしい若々しさを感じさせるものだった。
個人的な印象だけど、演出、美術はクラシカルでトラディショナルを極めたぶん、
歌や音楽ひっくるめた全体の躍動感は逆に“攻め”の印象がある。
ハーディング指揮の『ファルスタッフ』と、ちょうど逆の感じ。
やっぱスカラ座、なにげに考えることが面白いな。
日本ツアーでも、これだけチャレンジャブルなことを仕掛けてくる。

バンドでも演劇でも……というか、会社でも学校でも家庭でも何でも同じことだけど、
たくさんのものが集まって、出っぱったモノ引っ込んだモノ、強いモノ弱いモノ、
いろいろ合わさってアンサンブルが作られていく時、
それはひとつの生態系になるっていうか。宇宙の仕組みと同じものを、そこに見る。
ただ強い選手だけを集めてチームを作っただけでは優勝できないけど、
たとえば今、マー君が先発した時にチームが絶対に負けないのは、
マー君というすごい選手を生かすアンサンブルのすごさのおかげだと思う。
もちろん、最強のオールスター布陣というのは理想的なのかもしれない。
ただ、なんかこう、どこかがひっこむと、どこかが出っ張って
そんなことを繰り返してひとつの宇宙が少しずつ形作られていく様子を眺めるのも
大好きなんだ。
今、この瞬間も時は着実に進んでいる。と実感できる幸せ。

いやぁ、今日もNHKホールに宇宙を見たぜ。



宇宙最高っす!!\(^O^)/


さて。明日はいよいよ『ファルスタッフ』最終日。
うーむ、もいちど見たい!迷いに迷った、さっきまで(笑)。
が、やっぱり諦めよう!
こんなことなら、せっかくエコノミー券が出ていたのだから買っとけばよかった。
さすがに、そんなに『リゴレット』と『ファルスタッフ』かわりばんこに見てたら
しんどいだろうと思ったけど。うーむー。
今回ばかりはパンダまつり。つーことで。

それにしても、しつこいようだが、マエストロ・ハーディングも毎回めちゃくちゃ楽しそうだ。
オリンピック招致のノボリを持ってカーテンコールに登場したことは、先日も書いたが。
その次には、前夜のフットサル大会“ジュゼッペ・ヴェルディ杯”でチーム・ファルスタッフが獲得した
優勝トロフィーと共に登場して大喝采を浴びたとか。

てことは、明日のカーテンコールも……何かサプライズがあるかも!?


( ・∀・)




( ・∀・)



( ・∀・)




「ハルディングおにいさん! サプラーイズ( ・∀・)」










「…………………」



(つづく)