『アイーダ』〜残業パンダの倍返し!〜
【もはや説明するまでもないんですが、以下、とにかく内容が希薄でテキトーな自分メモですので、ご注意くださいますよう】
NHK音楽祭2013
グスターボ・ドゥダメル指揮 ミラノ・スカラ座管弦楽団
ヴェルディ 歌劇『アイーダ』全4幕・演奏会形式
@NHKホール 18時
(前回までのあらすじ)
月曜日のガラ・コンサートでのアプローズに対する、「いいです、いいです、僕はいいんですぅぅぅぅ」というあまりにも謙虚すぎるマエストロのリアクション。我が家では、あれはいったい何だったのだろうと毎日あれこれ想像しておりました。まぁ、多少ハラハラはしたけど素晴らしいコンサートだったわけで、あんな態度ではかえって「なんだ、そんなにひどいコンサートだったのか」と思われちゃいそうなのに。で、まぁ、結局、たとえるならば「松井のキレイな流し打ちで試合は見事に逆転勝ちしたんだけど、試合後のインタビューで “ナイス・バッティングでした”と言われた松井が “んー、まー、終わりよければすべてよしってことですかね”と、歯切れ悪く苦笑い……」というようなことではないかという結論に至りました。スカラの野球はリスペクトしているし、勝利に貢献できたことは喜んでいるけれど、自分の野球で、自分の勝ち方はできなかったという気持ちがどこかにあって。それで、どうしても喝采の真ん中に立つことはできなかったのかなと想像。
そして、本日。
ついに迎えた東京での最終残業日。
もとい最終公演、演奏会形式の『アイーダ』。
来日前から、オペラ好きとしては『リゴレット』がいちばん楽しみだったけど、
ドゥダメル好きとして今いちばん面白いのは『アイーダ』だろうなという期待はしていた。
これはもう、ある意味ドゥダメル的には今回もっとも“旬”なプログラムと言える。
なんたって、8月のハリウッド・ボウルでも同じく演奏会形式でLAフィルと演奏して大絶賛されたばかり。
ふつうの人の10倍の速度でキャリアを積み重ねている彼にとっては、
くらいの感じです。たぶん。
で、その勢いのまま日本に来るわけだから、今の米国でのドゥダメルの気勢というものを見るには、この『アイーダ』が絶対いちばんわかりやすいだろうと楽しみにしていたのだ。
彼のオペラや歌モノに対する仕事ぶりは日本ではまだほとんど知られてないが、LAフィル音楽監督に就任してからの、音楽劇や演奏会形式のオペラはとても評判がいい。
特に夏のハリウッド・ボウルでやった演奏会形式の『カルメン』や『アイーダ』は、もう、どっかんどっかん大盛り上がり。地元メディアでも絶賛され、スーパースター・マエストロの人気ぶりを証明してみせた。
そのハリウッド・ボウル版では、昨年のメト版でのセンセーショナルなデビューによってポスト・ホイ・へーかと注目を集めているアイーダ歌いのリュミドラ・モナスティルスカが登場したことが話題になったが。
今回の来日スカラ版も、かなりすごいキャスティングが実現した。『ファルスタッフ』での息の合った名人たちの理想的なアンサンブルも、ベテランのヌッチさんを取り巻く『リゴレット』のフレッシュ・オールスターも素晴らしかったけれど。
この『アイーダ』も、これがメイン・イベントでもおかしくない超豪華な顔ぶれが揃った。なんか、ひょっとするとメンツ的には今回いちばんすごいかも。
なんたって、まず、『ファルスタッフ』のメイン・キャストふたりがドゥダっちと残業してくれました(ノД`)。
タイトル・ロールを演じたアンブロージョ・マエストリさんがアイーダの父を、
クイックリー夫人を演じたダニエラ・バルチェッローナさんがエジプト女王・アムネリスを。
アイーダの恋人で、仕事はできるけど恋はダメんずのラダメスには、8月のハリウッド・ボウルでもラダメスを歌ったホルヘ・デ・レオン。マエストロにとっては、今回、ホルヘ君の参加はかなり心強かったのではないだろうか。
「ホル……じゃなくて、ジョージくん! 今日もよろしくーヽ(^。^)丿!」
(よしっ。き、今日こそ間違わずに言えたお(o゜▽゜)o)
「お言葉ですがマエストロ・パンダ、僕はジョージではなくホルヘです」
さて。
とにかく。はじまった瞬間から、ものすごくいい感じだった。
きたきたきたー!という予感。
これは、かなりすごいことになる……と最初からわかった。
もう、今日のパンダは絶好調!
水を得たパンダ!
まさにConducting Animalでした>サロネン先生。
最強オケに、最強歌手陣、そして大編成の最強合唱団、オフステージにもパンダ‥……じゃなくて、バンダ‥‥。
オペラの美しい舞台とは別の意味で、舞台上は圧巻の様相だ。
で、こういう時にパンダはキラキラしてるつーか。めらめらしてるつーか。大喜び、つーか。
なんか、つまり、
みたいな勢いです。
※写真と発言はイメージです。
指揮棒を握る指先も、背中も、喜びに溢れてるのが遠くから見ていてもわかる。このオーラが、人々を魅了するんだな。
そして、やっぱり、こういう団体戦になるとドゥダメルはめちゃくちゃ強いよなーと再認識。
スカラ座オケのクセ者ぶりというのは、どこか京都の若旦那的なわびさびというか、ガンコな江戸っ子のとんち問答というか、
そういう“個と個”の関係の中でせめぎあう味わいという印象で。
今回のオペラでも演奏会でも、ひとりがフッと変えると、全部がスッと変わっていく……みたいなところが結構あって。習慣なのか、たまたまなのか、不思議なんだけど面白かったし。
が。こういう巨大母艦みたいな編成になっちゃうと、もう、個人の我をどうこう言ってたら、たちまち溺れちゃうわけで。
四の五の言わせるヒマも与えず、ドゥダメルは全力でぐいぐいと舵をきりまくる。
「いいですかー!みなさーん!この船が沈んだら、みんな沈むんですよーーーー!がんばりましょうー!今がんばらなくて、いつがんばるんですかーー!」
みたいな(笑)。
船長だか艦長だかツアコンだか、よくわからないけど。
そうそう。とにかく、この感じ。
この一蓮托生というか、呉越同舟感(わりといい意味でねwww)というか……を誰もが楽しんでいるような。この雰囲気!
まさに「ああ、ドゥダメルだなぁ」というカタチだった。
指揮をする後ろ姿も、その舞台上に浮かび上がる音像も。
とことんダイナミックで、時には、手加減を知らないのかと思うほどロマンティックで、
かといって型破りなわけではない。
その音楽が生まれた瞬間の生々しさと衝撃を、今この舞台上に再現しようとしているかのように。
そのパワフルな統率力は、そのままドゥダメルらしい音になる。
が、同時に、やっぱりちゃんとスカラらしい響きでもある。
このあたりが、もう、このジャパン・ツアーにおける両者の収穫を物語っているようで嬉しくなるというか。
あいかわらず、グオォォォォッと唸りをあげる音渦の中でドゥダメルが快心の一撃を振り下ろすも、オケはマエストロの意図に反してフワッと着地。またしても、ちょっとガッカリする背中……という場面は今夜も目撃しましたが(笑)。でも、そういうところも含めて信頼関係なのだというのもよくわかってきた。
聞き手にとって「正解」を求めて音楽を聴くことほど退屈なことはない。個人的な考え方だけど。
だから、演奏家にも正解を求めないでほしいといつも思う。
ドゥダメルとスカラ。まちがいなんだか正解なんだか、何度聴いても全然わからないところが面白くてたまらない。
しかし、とにかく今夜は歌い手の凄さありきの世界だった。
これだけ素晴らしい歌があると、みんながそこに巻き込まれていくのだなぁと耳でも目でも実感した。
『ファルスタッフ』ではパンチのある熟女をパワフルに歌い、コミカルな演技で笑わせたダニエラ・バルチェッローナさんが、ここでは高飛車で意地悪で純情で悲しいアムネリスを情感ゆたかに演じ上げた。『ファルスタッフ』を見た数日後、ちょうどテレビで英国ロイヤルオペラの『湖上の美人』をやっていて、そこではオッサンかと見まがうオッサンばりばりのズボン役をやっていてびっくりしたのだけど、オッサンからのアムネリスで3度目のビックリ。
今、ノリにノッてる感じが伝わってきて、カーテンコール時のオケ・合唱団からの歓声を聞いた時には、カンパニーの中での愛されっぷりの凄さもよくわかった。
そういえば第2部、歌い終えた後に思わず一瞬、お互い会心の表情でマエストロと見つめ合い、ダニエラさんがにこっとほほえみ、それから抱き合った……という場面も印象的だった。
よかった。で、オッサンからのアムネリスもすごいけど、三波伸介ばりのファルスタッフから威厳バリバリの王様になったマエストリさんも素敵だったし。
ホイ・へーねえさんの堂々たる存在感は言うに及ばず。と言っても、初めてナマで聴いたのですが。
ちょうど昨夜はメトでのモナスティルスカのアイーダを映像で観ていたので、それぞれが表現するアイーダの可愛らしさと力強さのちょっとした違いを見つけたりできたのも面白かった。
ホルヘ君は、ちょっとラテン・ポップのスターみたいな華やかな雰囲気もあって。ものすごく艶のある歌を聴かせるし、とても魅力的だと思った。アメリカでは人気出そうな感じ、突如フッと集中力が(面白いくらいにw)途切れるようなムラもあったけど今後が楽しみ。
そして、当然っちゃあ、当然かもしれないけど、今夜のアプローズはすごかった!
エネーチケー音楽祭という、ふつうのクラシックのコンサートとはかなり雰囲気が違う中でも、最後はものすごく自然に、熱狂的なスタンディング・オベーションが起こって、いつまでも止まなかった。
ほぼ毎年、なにかしらエネーチケー音楽祭は観てるけど、こんな雰囲気って珍しい気がする。
その模様はスカラの公式サイトにも動画があがっているので、よろしければぜひご覧を。ただ、「20分間のアプローズとスタンディング・オベーション!」って……20分はちょっと盛ってる感じするけど(*^O^*)。*1
東京公演がラストということもあるのだろうけれど、舞台上もすごく互いを褒め称えるような交歓がいつまでも続いていて、今夜はドゥダメルもずいぶんと客席の歓声にも応え、舞台上にとどまり、オケのメンバーとも笑顔でたくさん言葉を交わしていた。
ガラ・コンサートの時、
「マエストロ、この喝采はあなたがお受けとりください」
というコンマスのしぐさにも、控えめな笑顔でオーケストラの後ろに隠れていたパンダですが。
今日は、ぞんぶんに……とまではいかないけど、まぁ、半分こ、くらいの感じで、送られた喝采を味わっていた。もしかしたら、やっぱりガラコンでの「松井の流し打ち」説はあながち間違いではなかったかも。
何はともあれ、よかった(o゜▽゜)o。
最後にドゥダメルは、舞台袖にいた合唱指揮のブルーノ・カゾーニさんの手を引いて登場。
カゾーニさんは、イタリア・オペラ界のまさに重鎮。生まれも育ちもバリバリのミラノっ子。ハーディングも彼をイタリアでの父親と呼ぶほどに慕っていて、家族ぐるみのつきあいなのだという。
ちらっと顔を見合わせて微笑むふたり。なんだか、この光景もちょっとうるっとするものがありました。
「今までいろいろ厳しいことも言ったが、よくやったな。おまえはもうパンダじゃない。立派なマエストロだ」
「(´;ω;`)ブワッ……これからはカゾーニおとうさんて呼んでいいですか?」
あ、なんかぜんぜん書きたいこと書けてませんが、
こんな時間なのでとりあえず終わります(笑)。
明日はいよいよ名古屋!
いやぁ、こんなコンサートの翌日に名古屋……すごすぎる。
*1:でも、実際に終演時間を考えると20分はやっていたのかも……うわぁ