Less Than JOURNAL

女には向かない職業

エスピオサイコー!

  • 『奪回指令』ジョセフ・ガーバー/熊谷千寿・訳(二見文庫)

前に書いた高額入浴剤のオリゴメールがネットだと半額くらいで買えるとこがあるのがわかって、最近は毎日風呂読書の日々。ただ、お風呂で本読むのは好きなんだけど、もう、どんどんふやけて最後は倍くらいの厚さになってしまうのが辛いところ。なので、大切な本は風呂用にもう1冊買う。ああ、活字離れで出版界冬の時代とかゆわれてるのに貢献してるな>じぶん。

そんなわけで、毎日ちびちび風呂オンリーで読んでいた『奪回指令』読了。これが、予想外とゆったら失礼だがとても面白かった。今どきのエスピオナージュって、どんなもんだろう……と思っていたのです。いわば、「ロバート・ジョンソンの再来」とかゆわれてる新人のアルバムを聞いても、結局は今どきロバジョンやってる若者よりもロバジョン聞いてるほうが全然いいに決まってんじゃん。みたいなことになる場合が多いわけで。が。中には、今どきロバジョンをやろうっていう若者はさすがだねー。ということもあるわけで。この『奪回指令』は、今どきロバジョンをやるだけの覚悟と、オタク度が気に入った!! みたいな、思わぬ収穫でした。

一年半の刑期を終えて連邦刑務所から出獄した元CIA工作員チャーリーのもとに、ある特別任務を依頼する連絡が入る。大統領補佐官サムによると、“原爆”以来の最高機密がロシアに渡り、それを奪還する手腕をもつ者はおまえしかいないというのだ。が、チャーリーはロシアの美貌の工作員を探知したにもかかわらず、わざと逃がしてしまう。機密奪回を命令するばかりで、その内容の開示を拒絶するサムに業を煮やしたチャーリーの真の狙いは? 全米各紙絶賛の冒険アクション小説!
amazon.co.jp 出版社/著者からの内容紹介)

もう、裏表紙のあらすじ読んだだけでおなかいっぱい。でも、それがいいの。いわゆる冷戦後エスピオナージュの正統派、南部ブルース並みの様式美。ちょっと近代ゼロゼロセブン的な世相とハイテクもイヤミない程度に入れたりして。ややゆるーい終わり方も、ゆるーいエスピオに目がないわたしとしては大満足。絶頂期ラドラム、みたいな味わい。こーゆー、登場人物とかストーリーのみならず書き手の人間味まで伝わってくるような、それでいて取り上げてるテーマは地球あやうし!みたいなデッカイ話……というのが、わたしは好きなのです。このジャンルは今でもトム・クランシーがダントツなのかもしんないけど。どうもクランシーって今ひとつ好きになれない。データ主義というか。膨大な取材データがあって、それをクランシーがアンカーマンのようにまとめてるよーな味気なさを感じて。つか、あれは軍事小説ですもんね。
こーゆー作品をきっちり地道に出し続ける二見書房の気骨にホレたぜ完売乾杯。

奪回指令 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)

奪回指令 (二見文庫―ザ・ミステリ・コレクション)