Less Than JOURNAL

女には向かない職業

バディ・ホリーの腕時計

バディ・ホリーが1959年、飛行機墜落事故の時にも身につけていた腕時計がHeritage Auction Galleriesのオークションに出品されるそうだ。出品したのは、結婚後半年あまりで悲劇の未亡人となったマリア・エレナ・ホリーさん。


ダイアモンド+ホワイトゴールドのオメガ製腕時計で、事故の3ケ月前にマリア・エレナさんが早めのクリスマス・プレゼントとしてホリーに贈ったもの。本体の裏には"Buddy Holly 12-1-58,"と刻印がある。ホリーの死後は、彼の父親が形見として身につけていたという……おいおい、それって夫っつーか、義父の形見じゃん。
という話は、まぁ、おいとくとしても……だ。
未亡人は他にもホリーのパスポートや、当時のイギリス音楽シーンに多大な影響を与え、後のビートルズストーンズ誕生にもつながったとさえいわれている1958年イギリス・ツアーの際に発給されたイギリスでの労働許可証(労働ビザ?)、スーツやシャツやカフスなどの衣類、写真家によって撮影された写真、そして未発表音源を含むという1955年頃のアセテート盤20枚などをドカーンと大放出。
うーん。
なんともいえない、ビミョーな心境になる。
まず「なんで今ごろ?」なのである。未亡人は、それらの品々をずっと大切に持っていたが、そろそろファンのみなさんとわかちあうべきではないかと思った……という。それは、もう高齢である未亡人がホリーのファンへ向けて生前の形見分けをしようという思いになったということか。はたまた、今ごろになって前の前の夫であるホリーの遺品を売らねばならぬ経済的な理由が生じているのか。

あの墜落事故の時にホリーが身につけていたという、そして奇跡的に無事だったという腕時計。その写真を見るだけで、ロックンロールファンとしては感慨深いものがある。それはホリーのみならず、リッチー・バレンス、ビッグ・ボッパーら、多くの人々を亡くした事故からの「生還者」なのだから。「ロックンロールが死んだ日」を象徴する品である。まぁ、人様のものをあーしろこーしろ言う権利はないが、今ごろになって一部のリッチなコレクター(←ひょっとしたらファンでも何でもない人かもしれない)に売るというのは、ちょっと淋しい気がしますわね。

バディ・ホリーが残した音源については、本当に何十年もの間オフィシャル・リリースによる全貌の解明(?)が熱望されている。21世紀になるというのに、あまりにもちゃんとしてないCD化には憤りさえ覚える。とりわけ、未発表音源については。で、今回出品されたものについての詳細はわからないけれど、たぶん今のところ一部がブート化されている、デビュー前にテキサスのラボックからレコード会社に送ったというデモのことだろう。これをCD化するとか何とか面倒くさいビジネスを絡めず、てっとり早く現金化しようという未亡人の意図は、彼女がオークション会社のサイトに寄せている「I miss him」というコメントとはなんだかチグハグな気がしてならないのはファンの傲慢なのだろうか。

なんか、せつないのお。

オークションは4月。主催するHeritage Auctionsのサイトでは、バディ・ホリーについての特集ページあり。