Less Than JOURNAL

女には向かない職業

池袋にて、元・娘ムコ殿系2枚。

夕方に池袋で用事があって、その前に欲しいDVDと洋書があったのでタワレコめざしてわざわざ新宿まで行ったらフラッグスBld.自体が休み。仕方なく池袋のHMVに行こうとしたら、これまたメトロポリタン・プラザ自体が休み。がっくーん。と、あまりの不運を呪いながら、とりあえずDVDだけでも……と久しぶりに池袋P'PARCOにあるタワレコに行ってみた。

P'PARCO。オープン当時こそスチャダラパーやトラットリア・ファミリーをイメキャラに起用して「池袋の渋谷系をめざしてみたものの(笑)、逆立ちしたって池袋イズ・ジャスト・オンリー池袋という現実に加えて、駅前とは思えぬほどドンヨリした立地条件も災いしたのかあっけなく企画倒れに。結局、いちおオサレなテナントが出たり入ったりを繰り返しつつも、なんだか渋谷系どころか「ド田舎の新宿アルタ」の様相を呈している。たとえば、宇宙百貨とかが入ってるわけです。タワレコ大好きっコではあるが、こんなヤングなビルの5・6Fまで上がってゆくのはちょっとシンドイ。そんなわけで、ついつい便利な駅ビルとかアマゾンを利用することが多くなって足が遠のいていたわけだが……。

すげー! タワレコ魂スティル・アライブ!
と、思わず英語になってしまうほどに気骨を感じましたぜ。ビンビンに。
さほど広くない2フロアの、みっちり&雑然とした感じが懐かしい。今は、どこのタワレコも全国規格のオサレーなCDショップになっているけれど。この雑然具合こそ、いにしえのタワー・レコードである。宇田川町ジーンズメイトの上階、みたいな感じ。で、時間がなかったんでそんなにじっくりと見て回れなかったんだけど、すごく久しぶりに行っても全然違和感のない、変わらぬこだわりを随所に感じた。最初に向かったDVDコーナーはツボを心得たモンドなイチ押しがズラリと並んでて、当然メインは「チャーリーとチョコレート工場」まつりであるとしても、ナニゲにさりげなくサム・ペキンパーまつりも絶賛同時開催ちゅうだったりして。買うつもりもなかったのに「ガルシアの首」と「わらの犬」を、今買わなければオトコがすたる!という妙な強迫観念に襲われて買ってしまいました。うっかりボックスまで買いそうになった。もう、なんか、サイフのヒモがゆるむ購買欲マジックが店内にたちこめてますよ。

てことは……あそこも健在なのか? と、小走りで向かったのはブルース〜カントリーのコーナー。ここはアメリカン・ロック系、とりわけオルタナ・カントリー的な分野に関してはブームになるずっと前からめちゃめちゃアンテナが鋭いので有名だった。まだ日本で『No Depression』が買えなくて、定期購読の申し込みも手紙で小切手で手続きしなきゃいけなかった時代から、『No Depression』にしか載ってないよーな新人とかをバンバンいち早く紹介していたり、とにかく情報量の多さと幅広さにいつも圧倒されたものだった。当時(もう6〜7年前かな)は、ルミネからフラッグスに移転したばかりの新宿タワーと池袋HMVもかなり新勢力アメリカン・ロックには力を入れていて、活字・電波メディアを先制する勢いだったのだが。池袋タワーは、その2店とも違う独自の情報ソースを持っているんじゃないかという品揃えで行くたびにモーレツな購買意欲をそそったものだった。

そして今日もまた、ブルース〜カントリーのコーナーは久々にわたしのハートを燃え上がらせてくれたのでした。量的には棚2〜3コぶんという小さなコーナーなのだが、面出しディスプレイの多いこと多いこと。で、そのひとつひとつに細か〜いコメントカードが! ブルース・ウーマンばかり集めたオムニバスには「女性ブルース・ギタリストに目がないアナタ!」と大きく書いてあって、その下に小さく「え、オレのこと?……と思ったあなた」みたいなことが(ウロ覚え)書いてあったり、もう、音楽的に博識なのは当然のことながら笑いのツボも押さえまくりの文章を読んで、しばらくひとりでドッカンドッカン笑ってしまいました。なんか、Yキさん(現モナレコード)がいた頃の、心斎橋タワレコにいるよーな気分になりましたよ。わたしはレコード屋が大好きで、特にバイヤーさんの心意気がビシビシと伝わってくるような店構え(表現は下品だが、それはまさに“店のツラ構え”ということだと思う)がたまらなく好きだ。そもそも「渋谷系」の始まりだって、渋谷HMVのひとりのバイヤーさんが、自分が好きなレコードを世に知らしめたいばかりに独自で独断の大キャンペーンを繰り広げたことから始まったわけで。しかし、最近のHMVは「世界中どこに行っても同じ品揃えで、同じ景観」が厳命され、店ごとの独自の色あいとか匂いはすっかり消されてしまった。タワレコとて同じよーなことはあると思うし、池袋店でも基本的には「街の大きな外資系CDショップ」の使命をきっちりと果たしている。でも、スキあらば……みたいな精神が(笑)そういうシュミのコーナーには見え隠れしているのがうれしいなぁと思う。伝説のパイド・パイパー・ハウスやメロディハウスの精神は、カタチを変えてこーゆー大きな店の小さなコーナーに引き継がれている。

ホントに、あんなにブルース棚の熱い店は専門店をのぞいては見たことねーよ。で。カントリーのコーナーでは当然!のように『ウォーク・ザ・ライン』公開記念(というより、便乗……のような気がするが)ジョニー・キャッシュまつり開催ちゅう!! とりあえず今んところキャッシュものは足りてるので買わなかったけど、同じく面出しリコメンドされていたニュー・カントリーの新譜関係を見たら、ウカツにも見逃してたものがあまりにも多くて棚の前で猛省する。去年の新譜だが、ダントツの超名作であるドリー・パートンのデュエット・アルバムとかも面出しになっているのがニクい。いやー、ホントにツボを見事に押さえまくり。で、今日は特に欲しいものもないんでCDを買う予定はなかったのだけれども、自分はマーティ・スチュアートとロドニー・クロウェルその他もろもろどっさり買いました。昔の青山ブックセンターと同様、行くと必ず欲しいものがあるお店ですね。ドゥ・ユー・ビリーブ・イン・マジック@タワレコ? イエース! あ、またコーフンして何故か英語になっちったよ。
そして帰りがけに気づいたのだが。マーティ・スチュアートとロドニー・クロウェルといえば、どっちもジョニー・キャッシュの元・娘ムコ殿ではありませんか!!*1 おー、偶然なのか、はたまたこれもキャッシュまつり該当商品なのか(笑)。少なくとも、自分はキャッシュに呼ばれたな。と思ったね。「オレのCD買わないなら、元ムコのを買ってけ」と耳元で囁かれたのかもしれない。

あのヒルビリー・ギターとビタースイートな歌声で、全編ばりばりに渋いゴスペル・ブルースを聞かせるマーティ・スチュアート& his FABULOUS SUPERLATIVESの『SOUL'S CHAPEL』。グラミーにノミネートされたエミルー・ハリスとのデュエット曲「SHELTER FROM THE STORM」を含むロドニー・クロウェルの『THE OUTSIDER』。元ムコ殿たち、どちらもキャリアを重ねた年輪を生かした素晴らしいアルバムを作っております。ああ、いいお買い物ができました。ありがとう池袋。ありがとうP'PARCO。そして、ありがとうタワレコ。これからは面倒くさがらずに、また足しげくのぞきに行きます。いやー、今日は挫折だらけの1日だったが、最後に全部チャラになったね。つか、これは池袋タワレコに行けっつーことだったんだね。

Soul's Chapel

Soul's Chapel

Outsider (Dig)

Outsider (Dig)

*1:マーティは五女のシンディ・キャッシュと、ロドニーは長女のロザンヌ・キャッシュとの結婚歴あり。ちなみにマーティはジョニー・キャッシュのバンドでも演奏していた