Less Than JOURNAL

女には向かない職業

あおいの御紋が泣いちっち

 わたくしにとってのアイドル格付けランキングで、久々の殿堂入りかと思われた蒼井優は「フラガール」を最後に急下降。←これはあくまで「わたくしにとってのアイドル」部門の話であって、現実としては「フラガール」を機に急上昇して立派な女優さんに成長されましたがね。そして去年の半ば頃から、今度こそホントに殿堂入りかっつーくらいに宮崎あおいフィーバーがものすごい勢いで吹き荒れております。わたくしのなかで。
 もう、どうしてこんなに可愛くて、美しくて、賢くて、『篤姫』ブームにも動じることなく粛々と自らの仕事に精進していられるのかと。いやー、もう、彼女の存在は、20年にひとりの奇跡だと断言する。

 こんな女優さん、初めて見た。

 と、思っていたんですが。
 先日、FUDGE誌の表紙&グラビアが宮崎あおい。で、彼女が、今秋流行の英国トラッドを着るという特集なんですが。これでもか、これでもかっつーくらいにタータンチェックを着ている彼女を見て、本当にビックリしました。

 それはまったくもって、まさに渡辺満里奈ちゃんでした。

 「初めて見た」と思ったけど、結局その正体は遙か遠い日の満里奈大魔神であったよ。
 後述するが、これはわたしにとってマキシマム絶賛語でございます。

 いやー、それにしてもなぜ、気づかなかったのか。
 ホントにびっくりした。あおい−満里奈を結ぶ線というのは、このFUDGE誌見るまで想像だにしなかった。やっぱ、満里奈ちゃんはすげーな。
BCR以上にタータンチェックセンセーションだぜ。

タータンチェックは、満里奈指数をはかるリトマス紙だな。

 マジでFUDGE誌のあおいは、満里奈すぎて泣ける。
わたくし内アイドル写真集オールタイム・ベスト1に輝く『GREEN PAGE』を思い出したよ。て、ものすごく神保町古本屋臭のする表現ですんません。

 あ、ちなみに、わたくしにとっての「渡辺満里奈ちゃん」というのは『MARINA』『EVERGREEN』という1、2枚目のアルバムと、その後のミニ・アルバム『CHRISTMAS TALES』という3作が出た期間に限定されます。
 この3枚(しかも最後は4曲入り企画盤)の期間に目撃した、あらゆる偶然と奇跡と幸運と必然が才能に昇華して生まれる「アイドル」という現象のまばゆい輝き。それをもう一度体験したくて、あるいはそれを超える現象に出会いたくて、かれこれ20年以上もアイドルというものにのめりこんできたのか。
 いやはや、長い旅路だぜ。そして。まだまだ続くのかね、この旅路は。

で、今、気づいたんだが、その3枚のアルバムがリリースされたのは全部1987年のことなのだ。もちろん、写真集『GREEN PAGE』も1987年。翌年夏に出た3rdアルバム『SUNNY SIDE』は、クオリティは高いけれど、わたしとしては蒼井優にとっての《『フラガール』以降》みたいな感じで。
 つまり、わたしにとっての渡辺満里奈はめちゃめちゃ期間限定アイドルだったわけだ。

 てか、わたしはこうして一生、《1987年の渡辺満里奈》の掌の上でくるくる回るだけなのか。なんだか、20年かけてものすごく遠い場所まで来たつもりが同じ場所でうろうろしていただけと気づいた気分:-)

 ところで。

 アイドルといえば。

 わたしにとって、女性アイドルのデフォルトは渡辺満里奈だが。男性アイドルのデフォルトといえば、なんとゆってもチャコ(敬称略)である。いわば「アイドル・ポップス」誕生以前に、現代に通じるアイドルの歌を唄っていたシンガー。同じ時代の歌手がロックンロール誕生以降も「歌謡」の歌唱から抜けられなかったのに対して、チャコ(敬称略)は最初からごくごくフツウにロックンロールだった。それはもう、突然変異的と言ってもいい。昔、ウエスタン・カーニバル世代のお嬢さまが「チャコはねぇ、かわいかったけど歌はヘタだったのよねー。でも、それもかわいくてー」という話を聞かせてくださったのだが(^^)、その「ヘタ」だったと表現の真実は、たぶん、ものすごくロックンロール的だったから「異端」だったということではないかとわたしは解釈している。
 だって、ロックンロール的な見地からすれば、めちゃめちゃ巧みです。しかも、誰もマネできない歌。
 歌に対する天才的なドライブ感、自由さ、パンチ力。まったくもって異端。その歌唱は昔の流行歌手というよりも、むしろ今のアイドル……とりわけ80年代以降のジャニーズ・アイドルの感じに近い。わかりやすく、しいて言うならばマッチ的な流れか。
 同時代の歌手たちがシナトラ世代のように歌おうとしている、あるいはどうしても歴史に縛られてシナトラ世代的にしか歌えないなか、ひとりだけボビー・ダーリン的な歌を唄っていた人という、そんなイメージがある。

 なんと、99年の貴重な映像をアップされた勇者がおられる。すばらしい。今でもやっぱり、あのドライヴ感は健在。



 先日のポール・アンカ公演でも「電話でキッス」を聞きながら、さすがオリジナルはいいけど、それでもチャコ(敬称略)にはかなわねーな!とキッパリと断言したものである。♪やっぱりね、アンカじゃ物足りないッ♪みたいな。サザナミ版「電話でキッス」はいろんな人が歌っているが、チャコ(敬称略)のカヴァーほどアイドル・ポップスな名唱はないと思う。ちなみにチャコ(敬称略)の「電話でキッス」は「ルイジアナ・ママ」のカップリング曲。なので、これは両面ともに《オリジナル超えカヴァー》という快挙を遂げたサザナミ史上でも金字塔の名盤と申し上げてよいのではないか。本日、さる信頼できるスジから、あのポール・アンカ公演にはチャコ(敬称略)もご来場だったとの情報を得た。で、「電話でキッス」よかったねぇ〜(^^)とおっしゃっていたそうだ。

 ちなみに今日の表題の「泣いちっち」は内容と関係ないです、念のため。
 で、余談になりますが、ハマクラ先生は、地方出身のお弟子さんが「東京の人の言葉は、みんな語尾が《ちっち、ちっち》言ってらぁ」みたいなことを言うのを面白いと思っていて、それで「僕は泣いちっち」を作ったそうです。「ちっち」なんて言わないのに、おもしろい。その発想、すごい。コトダマは、こういう歌に宿るとヤンチャなイタズラっ子のように輝き出すのですね。ちっちっちっちっちー。
 あ。ちっちーって、東京の人ってゆーよりむしろ、ちっちきちーに近いよね。