Less Than JOURNAL

女には向かない職業

好きか嫌いかは、いいか悪いかではない。

今、CRTはチャージ1500円+飲食という、正直、CD1枚買うよりもお金かかってしまうようなシステムでやっていて(コレでも毎月ほぼ赤字ぎりぎりではあるのですが)。同じ音楽ファンとして、CD1枚買うかわりにCRTに来てくれるお客様というのは本当にありがたい、大切な存在で。だから、やっぱり、続けていくからには、CD買うくらいの満足感をもって帰途についていただけたら……という、まぁ、理想ですが、そういうことを考えているわけです。CRTのプラスワン時代は、とにかく名のあるゲストの方を呼ばなければ……ということばかり考えてました。でも、ある時、とあるレコードについて訊ねたところ、とある、名のある方が「あ、ああ、それは……聴いたけど、よくなかった!」とキッパリ言ったんですが、そのレコードを明らかに聴いていない、ウソをついてるのがわかったんです。ご自身が、その道の権威だということでプライドがあったのでしょう。でも、レコードを買えるだけの金額を払ってイベントに来てくれるお客さんに対して、自分の体面を保つためだけに、聴いていないレコードを「よくない」と言い放つ、そのウソだけは音楽ファンとして許せないなと思いました。以来、とにかく、今後はウソをつく人だけはゲストに呼ばない、という方針を立てました。そこから、今のCRTのやりかたっていうのが、ちょっとずつできあがってきた気がします。
自分が好きか嫌いかというだけのことなのに、自分が嫌いなものや知らないものを「よくない」と言う権威野郎ってクソだな! 私は中学生の時に読んだエージ先輩の本で「いい悪いではなく、好きか嫌いかを書きなさい。そしたら、“この人の好きなものは聴いてみよう”という読者がでてくる。あるいは“この人が嫌いっていうなら、自分は好きかもしれない”と思われることも、書き手としてのひとつの信頼」という言葉に感銘を受けて、この仕事を始めた。ので、バカのひとつ覚えだけど、いい/悪いではなく好き/嫌いをハッキリさせることだけは気をつけている。