Less Than JOURNAL

女には向かない職業

お嬢さん! みのアンカです!

ポール・アンカ東京国際フォーラムHALL A

前回公演時、その夜型エネルギッシュ顔と、ベタベタのジョークと、それを言うときの身のこなし、そして何よりも客席のお嬢さんがたへの満点サービスから「歌うみのもんた」と名づけさせていただいたポール・アンカさんが待望の再来日。
あれから3年か4年か、忘れたけど。とにかく、その間に我らがみのもんたは名曲「夜の虫」をリリースして本当の「歌うみのもんた」になった。そして、その間、アンカさんのほうは何をしていたかというと…………

現在、初めての息子さんが3歳。

だそうですよ。
子作りかーーーー。
しかも、すでに立派に成長された娘さんが5人。他人事ながら、おいおい、どれだけお元気なんだよって話です。わたしの命名も、あながちダイアナですよ。
開演前、遠目にも目立つ若いブロンド美人が客席最前列に座り、さすがにこんなに若い奥さんのはずは……と思ったら本当にリトル・ハネムーンで一緒にやってきた新妻だった。前回来日時には、最前列のお嬢さんとチークダンスを踊り「ワッチョネーム? キヨコ? ンンン〜、ビューティホー・ネーム」と正調みの節を炸裂され、その後もしつこくお嬢さんをマイ・ニュー・ガールフレンドと紹介したり、お調子のりまくりだったんですが。今回、どうりで客いじり控えめ、そして前回に比べてものすごく気合いが入っててますますカッコいいなぁと思ったら……なるほど。

 あと、前回の来日後にはニュー・アルバムもあった。てゆーか、近況としてはこちらのほうが重要な情報なんですが。ニルヴァーナやらサバイバーの曲までカヴァーした(しかも、それがまたカッコいい)ビッグバンド・アルバム。と、その続編っぽいのをもう一枚。一昨年だったか、そのビッグバンド編成で行ったモントルー・ジャズフェスのDVDも素晴らしかった。そして本当なら昨年、このビッグバンドでの来日公演もあったのだが、残念ながら直前になって急遽来日中止になってしまった。でも、今回もホーン入り編成でビッグバンド曲もなかなかの迫力で再現されていたので、よかったよかった。

 そんなわけで、ここ数年は公私ともにかなり充実しているアンカさん。それはもう、コンサートにも反映されているのであります。同じくポールのマッカートニーも、ブライアン3歳児も、私生活の充実でぐっと音楽が若々しくなったりしたしね。やっぱり、我らのアイドルたちは皆、ハッピーでいてほしいですね。

 オープニングはもちろん今回も、客席後方から「ダイアナ」を歌いながら登場。あとはサミー・デイヴィスJr.の映像との共演とか、最後に「マイ・ウェイ」はシナトラの「声」と共演(たぶん映像を使うにはいろいろ大変で…)とか、途中でアコギを持ってバディ・ホリーの「It doesn't matter anymore」をエヴァリーブラザーズの「バイ・バイ・ラブ」などとメドレーで演奏するアンプラグド・コーナーとか、以前の70年代ヒットやシャンソン系のコーナーがニュー・アルバムからの曲に入れ替わった以外は、基本的な構成はほぼ変わらず。

ビッグバンド・ナンバーの時には自ら指揮棒を振ってノリノリ。が、その指揮棒をふりまわす様が、なんだか「朝ズバッ!」でCCDカメラを振り回しているみのに見えて仕方なかったのは、わたしだけでしょうか。

それはさておき。本当に最初から最後までスキなし。ものすごい! 声も、全然おとろえ知らずで、めちゃめちゃパワフル。パフォーマーとしての強靱さには、前回以上に圧倒された。自らのキャリアの価値、そして現在のスタンス、お客さんが求めているもの……そういうものをすべて、きっちりと押さえている。本当の意味で、自分自身を知り尽くした人のステージという感じだ。

ソングライター、いわば作曲家の先生として大成しながらも、これだけパフォーマーとして精進して、全力投球しているのは驚異的。アンカさんクラスのアーティストでは、セダカにいさんもそうだけど。その他には、今はパッと思い浮かぶ人がいないな。もしボビー・ダーリンが生きていたらこんな風になっていたのかな、と、ステージを見ながら思った。そういえば、前回の来日時にも同じことを思ったっけ。

これを「ああ、ラスベガス形式ね」と軽く片付ける人もいるだろう。やたら客席に降りていってお嬢さんたちにもみくちゃにされてひゃーひゃー喜んでいるアンカさんを、ロックとは正反対の、大衆演歌ショウの世界と考える人もいるかもしんない。
が、これぞロックンロールですよ。
ここまで続いてきたロックンロールの歴史上、ポール・アンカの名前は忘れるわけにはいかない。アイドル歌手としての絶大な人気、そして何よりもソングライターとしての数々の輝かしい功績……といった、己がロックンロール史に刻んだ事実を、今、もっとも自分の理想に近い形で伝えていく手段として、ポール・アンカは自らが「パフォーマー」であり続けるという選択をしているわけで。それはもう、自らのものすごい歴史に恥じないパフォーマーでなければならないという使命感もひしひしと感じるわけです。

しかしまぁ、アイドル時代のアンカさんのかわいいことったら。その頃のフェロモンは、今も出ているんですかね。まじで、客席でモミクチャにされてる姿がアイドルなんですよ。みの。なのに、なんだかキャーキャー叫びたくなるフシギなオーラが出ている。お嬢さんのハンカチで汁ふきまくるし。チューもするし。いや、欧米だなぁ。やっぱり、レディへのリスペクトが根底にあるんだなーという感じだ。てことは、やっぱ、日本でこれができるとしたらみの。か。

「Put your head〜」で恒例の最前列お嬢さんとのチークダンスを踊った後には、「オールディーズは好き?」と聞いて一連のオールディーズ・ナンバーを。つか、アンカさんはやっぱ、自分がオールディーズという意識がないのか。現役バリバリだから。さすが(*^_^*)。で、トム・ジョーンズの「She's a lady」でまたもや客席でもみくちゃにされ、で、あげくお客さんに「カメラ持ってないの?」ってゼスチャーで訊ねては、カメラをとりあげて、女子高生のように自ら2ショット撮りまくり。で、周囲も撮影会状態に。
そして、その後ステージに戻ったときに、

「先ほど、わたくし、おしりを触られて耳元で《Kissin' On The Phone》と囁かれました(*^_^*)」

 と。
 ま、多少デフォルメしましたが、そのようなことを。
 か、かわいい。
 で、ほんとに予定外で今までやったことなさそうだったけど、ピアニストにコードの指示して「電話でキッス」を歌ってくれた!
 ♪キッシオンザフォーン ンーッ
 いやぁ、うれしかった。まさかこの曲が聴けるとは!
 ティンガリン♪

あ、ところで。
前回の来日時に「マイ・ウェイ」の直筆楽譜(コピーね)をじゅうまんえん(←たぶんそれくらい)で買った人は、終演後に楽屋で直接サインを貰って記念撮影ができますよという物販(物販か?)があった。その時は「こらまた、ものすごい悪徳商法もあったもんだ! 誰が買うんだ?」とか話してて。あ、でも夫は「たぶん、オレがスナック《まい・うぇい》の経営者だったとしたら、絶対に欲しい。まちがいなく、大喜びで買った」と、ものすごくストライクゾーンの狭いことをゆってたが(笑)。で、まぁ、基本的には「誰が買うんだ、そんなもん」的なことで話は大団円を迎えていたはずなのだが、今回の公演が近づくにつれ「今回はマイ・ウェイじゅうまんえんはあるのだろうか」と、なぜか気になって仕方ない。
えっと、もしかして、人間はみな、一生のうちに必ず一度か二度の悪徳商法の罠におちる宿命にあるのかもしれないのです。と思うのです。なんか、ものすごーく落ち込んで判断力が氷点下の時にうっかり誘い寄せられて、これっぽっちもいいと思ったことがないイルカのリトグラフポスターを言葉巧みにン十万円ン十回ローンを組まされて買ってしまう、なんてことは自分の人生の中ではまったく考えられないと思っている人が世の中は大半だと思いますが、それでも、ある日うっかり買ってしまう人は絶えないわけで。ああ、誰もがそんな危険と背中あわせで生きているのね。だったら、同じ悪徳商法なら《マイ・ウェイ》の罠に落ちてもいいかも。というか、これは、もちょっと適正価格だったら絶対に欲しいもん。そんなわけで、もしかしたらオレ、《マイ・ウェイ》の楽譜買っちゃうかもしれないけど、そしたらごめんね……とブツブツ呟きながら会場に向かいましたが、幸運なことに、もとい、残念なことに今回は売っていませんでした。よかった! めでたし、めでたし。というだけの話です。意味のない長話でごめんね。

さて。この3日間のエントリーは、寺尾紗穂→ビーズ→ポール・アンカ。なんとめちゃくちゃな人だろうと思われるかもしれないが、これがまったくふつうのあたしです。自分にとっては長く続く一本道です(笑)。ちなみに、次のライブ予定は前川清。どうだ、まいったか(^^)/。