Less Than JOURNAL

女には向かない職業

上司にめぐまれなかったら オーネット オーネット

正月の深夜、ふとテレビをつけたら夏にやった“東京JAZZ 2005”をやっていた。
ゲイリー・バートンの姿なんて、何年ぶりに見るんだろう……てなレベルの、80年代初頭までの記憶でしかジャズを聞いていない類のリスナーである。いやぁ、しかし、時の魔法とはこーゆーことなのか。学生時代、あの軽やかな音色がどーにもこーにもいかんともしがたく琴線に触れなかったゲイリー・バートンが沁みた。ま、レコ1枚買うのも命がけの10代にとっては、まだまだ『クリスタル・サイレンス』のワビサビに心が洗われるほど心の余裕はなかった……もしくは、心を洗う必要がないくらいキレイな心だったのかもしれない。なんちて。そんなわけでゲイリー・バートンもよかったし、すっかりオッサンになってしまったマーカス・ミラーもよかったし。なんたって、メインを務めた(?)ハンコックの“ヘッドハンターズ05”である。いやぁ、ウォーターメロンマン! バタフライ!これはお茶の間でなくナマで観たかったなぁと思うくらい盛り上がった。曲の途中でワケがわかんなくなってるハンコックを助けにゆくマーカス・ミラーは、さながらブライアンとジェフリーの連携プレーをほうふつさせた。つか、終演後のインタビューでハンコックがマーカスに「オレ、マイルスの時もよくああなってたよな」と言うのを聞いて、そういえばマーカスは、マイルスのバンドで“小僧”だった頃からの舎弟なんだから、そりゃあ絶対服従だよなぁと気づいたが。
他にも山中千尋さんをはじめ、最近の新鋭プレイヤーたちの演奏も素晴らしかった。が、「あー、このひとも老けたねー」とか驚きながら見ているわたしのような、ジャズ・ファンを名乗るのもおこがましいリスナーとしては、もはやジャズ・フェスの楽しみ方がオールディーズ・ショウと同じなので、とにかく自分の中で“懐かしい”要素があるプレイヤーの演奏が盛り上がる。それはもちろん、ジャズそのものがオールディーズだという意味ではない。そこにある音楽は新しくても、自分にとっての“懐かしさ”とシンクロする音がうれしい。というか。そういうジャズを耳にすると、自分の脳内がノスタルジア・モードになってしまうわけだ。なので、最近はほんと、素直な気持ちでジャズがいちばん楽しいかも。だって、20年ぐらい観ても聞いてもいなかったプレイヤーなのに、その最初の音ひとつ聞いた瞬間に“うわー、××だー!”と実感できるって素晴らしいことですよ。で、自分では忘れていたと思っていたプレイヤーや、曲や、アルバムが、その音によってブワーッと甦ってくるっていう体験は、ちょっぴり“音楽の魔術”みたいな感じだったり。

あ、そういえば、すごくひさびさにビル・ラズウェルの姿も見た。懐かC。

それはさておき。
遡ること大晦日、新聞をパラパラめくっていてぶったまげた。
3月に、オーネット・コールマンが来日するのですね!
何年か前に東フィルとの競演で「アメリカの空」を演奏する……というコンサートで来日したりしていたが、オフィシャル・ツアーとしては20年ぶりだとか。
正直、近年の作品については全然ついていけてないのだが、それでもやっぱりナマで体験できるとゆーならありがたく体験させていただかねば。たぶん最後かも、とも思うし。というわけで、あわてて東京2公演(オーチャード・ホール&東京芸術劇場)のチケットを押さえた。11月に前売開始だったらしくて当然あんまり良席ではなかったが、それにしてもソールド・アウトになってないのはちょっとビックリした。ま、ソールド・アウトしてたら大晦日の広告など出なかったわけでありがたい限りだが。オーネットさんといえば、昔からナウいこと大好きオジサンとして、ロックが好きなヤングにもまぁまぁ人気があるとゆーイメージだった。なので、当然、昨今の若者にも最先端おしゃれアイテムみたいに扱われてるのかと思いきや。そうでもないのね。ま、そうでもなくてありがたかったけど。オープニング・アクトとして、山下洋輔さんがソロを弾くそうだ。その制度には賛否あるだろうが、わたしとしては久々に洋輔さんのピアノが聴けるのはうれしい。楽しみだ。

今のところ来日予定のレギュラー・バンドは、オーネット+ドラム+ベース+ベースという編成らしい。ホントに何の予備知識もないので、そういうライブに行くのも珍しいことなので期待たっぷり。ちなみに、ドラムスはオーネットの息子さん。

あっ! 今、ステキなことに気がついた。

お父さんがアルト・サックス、息子がドラムス。

つーことは。
オーネット・コールマンの息子さんは、つまりアメリカの坂田学なのか!?

今、この事実に気づいているのはわたしと山下洋輔さんだけかもしれん。
や、んなこたないない(←タモリ風に)。

いや〜ん、好きになってしまうかもしれない。
オーネット・コールマンの息子さんを。
超たのしみになってきました。
※来日情報(JEC)
http://www.jec-international.co.jp/event/event_Ornette.html

【追記】

今になって考えてみると、なのだが。
オリジナル・レコーディングでは完全版を収録できず、なおかつオーネット以外のバンド・メンバーの参加も断念せざるを得なかったという『アメリカの空』を、レギュラー・バンドを率いて東フィルとの共演で完全演奏したという数年前の来日公演というのは、つまり……コンサートを実際に観ていないから何とも言えないのだが、ひょっとして、ブライアン・ウィルソンがロンドンのフェスティバル・ホールでおこなった『SMiLE』の世界初演コンサートと同じ意味合いを持つものだったのかもしれない。そう思うと、これを観ていないバカバカ自分のバカー! そもそもオーネットが描いたアメリカというテーマからして、とても『SMiLE』と共通する部分があるような気がするし。あら、まあ! 今、『アメリカの空』を聞いたらたくさん新発見がありそう。でも、その前にいろいろと久しぶりに聞きたいアルバムが出てきました。↓これとか。