Less Than JOURNAL

女には向かない職業

寺尾聰『Reflections』

今、流れているキリン・ラガービールのCM。ひとつは木村カエラを迎えて17年ぶりの再々結成となったミカバンドの「タイムマシンにお願い」。もうひとつが、寺尾聰井上鑑・今剛・高水健司山木秀夫という当時のレコーディング・メンバー*1と再集結して演奏する「ルビーの指環」。いかにも「今、オヤジバンドが流行してるんで〜」という企画書が浮かんできそうなCMだけど、楽しそうでいいねー。また、ミカバンドと寺尾というチョイスが絶妙だし。オフィシャルサイトには、CM映像のみならずメイキング映像やインタビューなどなどが載っていてかなり充実していておもしろい。
http://www.kirin.co.jp/brands/RL/

そろそろ、ようやく、いよいよ「ルビーの指環」がもういちど聞きたい時代がやってきた。つか、この曲が収録された、音楽史上に残る超ド級の伝説的ヒットとなったアルバム『Reflections』を。

寺尾の愛した数式、『Reflections』
ザ・ベストテン”のセットのソファの真ん中だけなんで色が違うかっていうと、それはあまりにも「ルビーの指環」がド級のヒット曲だったことを記念して寺尾聰が寄贈したのだ……というのはベストテン世代にとっては郵便ポストが赤いのと同じくらい常識だが、昨今はもはやそのことを知らない人のほうが多いのかもしれない。
で、伝説的ヒットという数字による評価のみならず、この「ルビーの指環」を含む大ヒット満載アルバム『Reflections』はまったくもってパーフェクトとしかいいようのない奇跡の名盤である。いわゆるひとつのTOTO〜エアプレイ・サウンドと総称される80年代ジャパニーズ・スタジオ・ミュージシャン・サウンドの最高峰をきわめ、歌謡でもポップスでもない独自のジャパニーズAOR路線を確信をもって大胆にクリエイトしていて、で、♪ちゅーるーるーちゅるちゅるちゅるちゅる〜と、並みの歌手だったら絶対ヘンなことになるであろう可愛いスキャットを寺尾は最高に渋く“演じて”いる。ある意味『Reflections』は寺尾にとって最大の“当たり役”ともいえる。
が、あまりにも完璧すぎた。あまりにも売れすぎた。
売れすぎたので、売られすぎた。いつの世も、“想像を絶するほど売れる”というのは“なんとなく買っちゃった人”も多いということでもある。それが流行歌の宿命ではある。なので、まぁ、「売れすぎて、売られすぎた」というのも流行歌としての名誉と解釈できるのかもしれないが。
で。
以下、音楽的な意味あいは皆無の「ブツ」としてのレコード話である。
この20余年の中古屋めぐり生活を振り返る時、わたしの脳裏に真っ先に浮かぶのは『Reflections』のジャケである。かつて中古屋ハンターでは、レコ棚の仕切板の数よりも『Reflections』の在庫数のほうが多いと囁かれていた。とにかく、すごかった。あまりのすごさに、わたしは思わず店頭で一句詠んでしまったことさえあった。

うんざりだ たのきん 銀蠅 リフレクションズ
【解説】中古レコ屋に喜び勇んでやっては来たものの、漁れども漁れども出てくるものといえばたのきんトリオ、銀蠅一家、寺尾聰の繰り返しでガックリしてしまう。音楽がうんざりだと言っているのではない。これらの音楽は素晴らしい。レコードに罪はない。しかし、これらのジャケはいい加減見飽きたものよのお。それくらい、毎日いっぱい見ているのだよ。
↑これを書いてて、当時、もう一句詠んだのを思い出した。

犬も歩けば 寺尾にあたる
あッ!! これは「句」じゃないですね。ことわざですね。20年の歳月を経てようやく気がつきましたバカバカじぶんのバカー(笑)。
そんなわけで。ビフテキも、ビフテキの家に住んだら食べたくなくなる(←完全にたとえが間違っているが)。あまりにもジャケを見すぎたので、その後CDショップで『Reflections』を見てもパブロフの犬で「うーん、おなかいっぱい」状態だったのだ。しかし、あれから幾歳月。今はもう、中古レコ屋で『Reflections』があふれている光景を見ることもない。月日が解決することもある。見た目はちょっとオッサン化しているのは仕方ないとしても、あの黄金メンバーによって昔とまったく変わらない音色で奏でられる「ルビーの指環」をCMで見ながら、わたしはいよいよとうとう再び『Reflections』が聞きたくて聞きたくてたまらなくなっているのだ。

ついでに……と言ったらなんだが、ミカバンド。あの再結成からもう17年なのかー、というのにまずビックリ。で、カエラ嬢はイメージといい存在感といいピッタシだね。キュートでグレイスでパンクなゴールデンハーフ、みたいな感じで。このバンドの中では、昔のアンアンの外人モデルさんみたい〜。カワイイ。おまけに、歌も今まででいちばんうまい。オフィシャルサイトのインタビューで加藤さんが、ウチの(バンドで一緒にやる)場合は歌がうまいだけじゃダメで……と、女性メンバーのインテリジェントとかキャラとかルックスの重要性を説いていて、確かにもう、そういう意味じゃカエラはバッチシで加藤さん慧眼サスガ!と思うんだけど。過去、ミカバンドに歌のうまい女性がいたのかとちょっと質問してみたい気がしないでもない(くすっ)。あと、CMに出てくるメンバーは加藤・高橋・高中・小原。現時点の定義としては、この4人のミカバンドをミカバンドとする。ということなのだろうか。
やっぱ、つの☆ひろはダメなのか? スノッブなイメージを壊すから?

<本日の結論>つの☆ひろのおかげで、スピッツの「涙がキラリ」のどこに「☆」を置くのかが今でも時々わからなくなる。

Reflections

Reflections

ちなみに↑には、紙ジャケ仕様もある。わたしは紙ジャケCDが大好きだ。が、上記のように、このアルバムに関しては紙ジャケはトラウマですので、フツウのを買いたいと思います。せっかく出てるのに「紙ジャケはイヤ」と思ったCDは初めてかもしんない。

*1:高水・山木は『Reflections』には参加していないけど