Less Than JOURNAL

女には向かない職業

エルヴィス→マエキヨ→クワタ

明日はいよいよ前川清デビュー40周年コンサート。
昨日は、発売されたばかりの40周年記念本『恋唄〈コイウタ〉に恋して』を買いに行って瞬読破。今日は朝から、特選コンピbyオレをガンガンに聞いております。
いやー、泣いちゃうかも。あたし(笑)。

ところで。
内山田洋とクールファイブ結成40周年記念6枚組BOX『こ・い・う・た』。これはもう、本当に素晴らしい。写真の点数の多さ、アートワークのムダなく洗練されたスッキリ感、初代ディレクターで元マヒナスターズの山田競生氏のインタビューなど濃厚な解説ブックレット……そして、選曲。わたくし的には、もう、マストの部分もハズシの部分も含めてツボを200%がっつり押さえられた気分。さすがウルトラ・ヴァイブ、THE高護ワークスだ。買う前に収録曲チェックしたら微妙にシングルがコンプリートじゃないんだなー、やっぱり曲数的に全部は入りきらないのかなーと思いつつ、それなのに小林さんが歌うクールファイブ史上屈指の珍曲「イエスタデイ・ワンス・モア」*1は入っているって! 素晴らしい! いや、素晴らしくないと思ってる人もいるだろうが、わたしには素晴らしい! こんな巧みなハズシワザを効かせるコンパイルをする人は、まさか……!? と、思っていたらホントに選曲監修が高護さんであった。おおー。

 ともすれば、高齢向けおセンチ色が濃くなりすぎるか、もしくは若者の不遜なサブカル色が前面に出すぎるか……昨今、昭和歌謡のリイシューはそういう危険を常にはらんでおるわけですが。さすが。これぞ師範の演技、でございます。再発かくあるべし、みたいな。神の再発ここにあり、みたいな。ああ、本当に高さんプロデュース仕事でよかった。ここでお礼を言うのもなんですが、ありがとうございます。ああ、いっそ今回の本もウルトラ・ヴァイブが作っていたら、表紙といい語り口といい、あんな実話誌クォリティな……いやいや、むにゃむにゃ。
 で、数ある作品の中から、よくぞオレの聞きたかった曲を全部入れてくださいました!と感動したのがライブ音源。もう、アンディ・ウィリアムスの日本語バージョンにはわたくしの好きな音楽の要素が全部はいってると断言できる「ゴッドファーザー愛のテーマ」を前川清の歌声で聞けるなんて、わたしにとっては「打てば落合、投げれば山田」のスーパー野球選手を見てるよーなもんです。

 そして、子供時代からエルヴィスに憧れていたという前川さんが、本の中でもフェバリット・ソングに挙げていた「ラブ・レター」。そして、これまたわたくしが世界でいちばん好きな曲オールタイムベスト10にランクインする「スウィート・キャロライン」。もちろんニール・ダイアモンドのオリジナル・バージョンで歌っているのではないよ、1970年の『エルヴィス・オン・ステージ第2集』バージョンだよ! 

 本当に歌いまわしが、カラダに入っている。ああ、もう、本当に本当にエルヴィスが大好きだったことがよくわかる。そして、それが後々、現在に至るまでの歌唱に多大な影響を及ぼしていることもわかる。

 そういえば、クールファイブはRCAでエルヴィスとレーベルメイトだったしね。

 ちなみに、「スウィート・キャロライン」でエルヴィスが「♪うぉーおおー」と軽くフェイクを入れるところを、前川さんはなぜか「♪あははん」と歌っている。そこが、もう、最高なんである。確かにその「♪あははん」はエルヴィスの紋章なんですけど、なぜそこに入れる!?みたいな。
 いや、訊ねるまでもなく、好きだから入れてるのがひしひし伝わってくるんですけどね。だって、2コーラス目でもしっかり入れてるし。
 聞くたびに「エルヴィスか」とツッコミを入れたくなる……というか、スキあらば「♪あははん」を入れるという意味ではむしろ「大瀧詠一か」というツッコミのほうが正確といえるかもしんない。

 大瀧詠一の「♪あははん」は、日本一。

 ところで。わたしが今年いちばんよく聞いている前川清は、以前NHKBSで歌ったサザンの「TSUNAMI」のカヴァーかも。これがもう、鳥肌が立つ*2。歌い出しの低い艶声はエルヴィス系だし、桑田佳祐のルーツ・シンガーである前川清唱法が爆発するサビの♪見づめあーう゛とーズなーおにー〜のくだりは、もう、桑田唱法を爆発させた結果として前川清になる……という、先祖返りっていうか、なんていうか、先祖に子孫がのり移ったような、ノーベル賞級の化学変化が起こっている。
 このカヴァーを桑田さんは聞いたのかなぁ、と、この曲を聞くたびに思う。かつてレイ・チャールズが「いとしのエリー」をカヴァーして、これもきっとものすごい光栄なことだったと思うけど。同じ日本人の歌手であるふたりが、時代もジャンルの垣根も越えて、コトバでくどくど説明することもなく、ただその歌声だけで一本の太い線でつながっていることを証明した「TSUNAMI」のカヴァーは、わたしにはレイ・チャールズの時よりもずっとずっと深い意義のある、歴史的なパフォーマンスだったのではないかと思える。
 もう一曲、つい最近リリースされた代表曲+カヴァーで構成されたアルバム『愛を唄う』にも、サザンの「真夏の果実」のカヴァーが収録されている。こちらもやはり素晴らしいカヴァー。ただ、楽曲とのダイナミックな一体感という点では「TSUNAMI」のほうが好きだ。あと、「TSUNAMI」は公開録音だけど、フルバンドにストリングスというゴージャスかつ丁寧なアレンジで、それが前川さんの歌の重厚な存在感にすごく合っている。いい意味で、ロックのサザンとの違いがよく出ているというか。『愛を唄う』は、シンセ多用サウンドが演歌っぽすぎるところがちょっと残念ではある。でも、GLAYの「HOWEVER」や徳永英明の「恋人」なんかも歌っていて、本当にどうして、ジャンルに関係なく自分に似合う歌をどうしてこんなにわかっておられるのかという選曲で、今年下半期のわたくしのヘビロテ・アルバムの一枚である。

 エルヴィス・プレスリー前川清桑田佳祐

 わたしには、その3人を結ぶ線が最近どんどん、どんどん太くなってきているように思える。

 ああ、明日のことを考えると眠れそうにありません(ちょっとウソ)。

*1:タモリ倶楽部系の「誰が歌ってるでしょうクイズ」の定番

*2:あそこにあります