Less Than JOURNAL

女には向かない職業

CRTの告知というかマノエリちゃんというかディランというか。

 音楽でも、映画でも、文学でも、アイドルでも、ブログでも、やさしい心をむしばむものは、もういらない。と、思う。若い頃はいいのヨ、いくら荒くれても毒づいても「やさしい心」の蓄えは充分にあるし、補填も効くから。しかしねぇ、この歳になると、残り少ない「やさしい心」は大事にしないと底をついてしまうので、どーでもいいものに触れることで貴重な蓄えを切り崩すようなことが非常にもったいない気がしてねぇ。ホントに、ヤボなものにかかわると自分のエネルギーがどんどん失われていくのがよくわかる。「やさしい心」って絵空事のような気がしていたけど、人生においてリアルに重要な構成要素なのよ。意外とね。まぁ、そんなこともしみじみ思う今日この頃。



 なんのことかといえば、先週、マノエリちゃんのデビューコンサート「プロローグ〜乙女の祈り〜」に行ってきたのですよ。でね、なんか、とにかく最高だったんです。そもそも、マノエリちゃんの登場はわたしにとって超ひさびさの大事件だったのですよ。去年、レコード会社に行ったら、偶然、かれこれ20年来の旧知であるKANさんとバッタリ会って、その時に「マノピアノ」もらったんです。それ以来、夢中。で、なんでこんなにいいんだろうなぁ……なんて思っていたところ、「ラララ−ソソソ」のジャケを見た瞬間に「そうか、やっぱり、やっぱり、渡辺満里奈のファースト・アルバムかぁぁぁーッ!」と気づいて大興奮。しかも、あくまで私見ですが「ラララ−ソソソ」って平成の「深呼吸して」だと思うわけです。そういや夏に出る次のシングル「世界はサマー・パーティ」も、まさに、満里奈ちゃんでいうところの「ホワイトラビットからのメッセージ」ではないか! と、びつくり。偶然? アイドル歌謡神からの啓示かなんか? とか思ったりして。ちなみに、すでにご存知の方であればウンザリするほどご存じかと思いますが(笑)、わたしにとってアイドル歌謡のデフォルトは渡辺満里奈のファースト・アルバム『MARINA』にすべて集約されているのです。そんなわたしにとって、あのアルバムとピタッと重なるものを感じたアイドルというのは……初めてかもしれない。しかも、エリナだしマリナだし(笑)。なんて。



 そんなわけで、このコンサートもとても楽しみにしていたのですが。本当に素晴らしかった。無垢さと一生懸命さと、初々しさと、だけどたくましさと度胸もバッチリ。「プロの可愛らしさ」という、いちばんむつかしいバランスをまこと見事に持っておられる。わたくしのすさんで汚れて朽ち果てた心もすっかり浄化されてしまいました。ほんとよ(笑)。こう、なんつーか「邪悪な心とんでゆけー♪」くらいの感じです。せちがらい世の中ですが、こんな風な「心を洗われる音楽」というのもあるんです。都会の雑踏の片隅で、綺麗な水が湧く小さな泉を見つけたような気分。



 で。マノエリちゃん、まじすごい。まじやばい。いやーーー、まいったな。困ったなー。こんなに可愛くて、いったいどーしてくれるんだ。ぶー。と、コンサートの興奮冷めやらぬまま、中野の居酒屋に突入して、ご一緒した本画伯と、CRTの修学旅行担当N氏と共にマノエリちゃんについてしばし熱くしゃべり倒した。「音楽にジャンルは関係ない」とは、まさにこういうことを言うのであろうか。つか。ま、集ったメンツがメンツなもんで、ついつい自然とCRTみたいにハロプロを語るという無茶な展開になっていってしまうだけなんですが。まぁ、人はみな、なにごとも自分の土俵の内側で語ることを心地よいと思うってことか。我々はベリーズ工房ビートルズなら、マノちゃんはディランだよね」という論調でなんとか話に整合性を持たせるべくムダな努力を続けた。が、そりゃさすがにムリがあるわけで、いくら話しても理屈は破綻するばかり(笑)。ま、それが楽しいんですけど。



 最近のディランはライブでずっとキーボードを弾いて、ステージの真ん中がぽっこり空いているというフシギな図になっているのだが、そのことから「マノエリちゃんが“世界はサマー・パーティ”のイントロでピアノ弾いてる時に、エッグとの間に空間ができて、それがディランの最近のステージにそっくりだよね」とか苦しいことをゆってみたり。わたし的には「ディランもマノエリちゃんも、意外と踊るのも好きである」という共通点を発見できたのがたいそう嬉しかったんですが……。まぁ、とにかくなんとかビートルズとディランとベリーズとマノエリちゃんの理想的な関連づけをできないものかと努力したんですが、結局、


ビートルズベリーズはグループで、ディランとマノエリちゃんはソロ」



 という、まぁ、まったく結論にも何にもなっていない結論に達したところで散会しました(笑)。



 それでまぁ、ハロプロの話をしながらディランのこともいろいろ話してて、今週の木曜日に予定されているCRTのディラン特集に、本画伯も遊びに来てくれることになった。ジョージまつり以外でCRTに来てもらうのはほんとに久しぶりなので楽しみ。


 ディランの新作『Together Through Life』は英米では初登場ナンバーワンになっちゃうし、こないだ東ボブさんもおっしゃっていたのだけれど、『ノー・ディレクション・ホーム』の頃以降、アメリカでのディランは《再ブレイク》といってもいいくらいの盛り上がりようで、その勢いがずっと続いているようだし。近年のディランはノリノリで、作品はある意味すごくポップでわかりやすい感じになっていて、だけど反面、ネタ元というか、曲やサウンドの方向性はものすごくマニアックで学究的な深みにどんどん進んでいるという、その両面がどっちもすごく面白い。ディランって、なんとなく60年代からずーっと聞かないと「つながらない」みたいなイメージがあって、だから今からちゃんと聞こうと思ってもなかなか入りづらい……と思っている人も多いようなのだけれど。思うに、今、わりと「これからディランを…」という人には絶好の機会じゃないかなーという気がする。今までハロプロに興味がなかった人も、今ならマノエリちゃんをきっかけにすると入りやすいのと同じだネッ(笑)。ホームページのポップな感じとか、ラジオDJを始めたりする新展開とか、そのあたりからもディラン側の積極的な《フレンドリーキャンペーン》の匂いを感じるし。なので、まぁ、今回は最近のディランの楽しみ方について、本画伯もまじえて一緒にわいわいと語りあいたいなーと思っております。あと、もちろん「知らなくてもいいけど、こんな元ネタがあったらディランがもっと楽しくなります」みたいな、とてもCRT的なルーツ・ロック面からの話もいろいろと。

 ということで、新たにゲスト参加も決まったという告知を兼ねてディランだかマノエリちゃんだか何だかわからないテーマで更新してみました。CRTは今週の18日(木)@ネイキッドロフト。詳しいことはいつものようにDaDooRonRom.comのほうにも載せてますので、あわせてご覧ください。

はじめての経験(初回生産限定盤A)

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無敵のボブ・ディランNIGHT〜特選!夏のちょび髭フェア〜
■お待たせしました! CRTの親玉、ボブ・ディラン大将(の特集)がネイキッド初登場です。最新作も絶好調、加速する進化っぷりをたっぷり楽しみましょう。萩原健太のロンドン公演レポートなど、最新情報ももりだくさん。今年の夏、ディランを聞かずして何を聞く!?

●2009年6月18日(木) at Naked Loft (ネイキッド・ロフト)
●OPEN 18:30 START 19:30
●出演: 萩原健太(音楽評論家)、寺田正典(レコードコレクターズ編集長)、萩原祐子(音楽評論家)
●ゲスト:本秀康(漫画家/イラストレイター)

●料金: 1500円(+1drinkから)
●予約/お問い合わせ: Naked Loft (Tel: 03-3205-1556)
※電話予約受付中!! 16:30〜24:00