Less Than JOURNAL

女には向かない職業

無題。

レココレの達郎さんインタビューが好評みたいでうれしいです。ほっとした。
山下達郎さんという人は、歯に衣着せぬズバズバとした物言いをするイメージがあるけれど、長年マスに向かって活動してきた人だけに言葉の選び方はものすごく慎重で、誤解を招きそうなちょっとした言い回しなどにもとても気を配る。新作インタビューなどでは何を話すか伝えるかを事前にしっかり考えて臨むので、相手に乗せられてうっかり喋っちゃった的なことは滅多にない。インタビュアーからすると、なかなかシッポを出してくれない手強い相手なわけです(笑)。そういうキャラを知っているだけに、今回、インタビューの時に大滝さんの話を始めた瞬間、これは何かを背負う覚悟を決めたんだなと思った。ちょっと、なんというか、今までに経験したことのない、背中がゾクっとするような感覚があった。

聖書の昔から、カリスマが死んだ後にはニセ預言者たちがわらわらと現れる。生前は煙たがって本人に近寄りもしなかった人たちが競ってベラベラと喋りはじめる。今だから話せる秘話だ何だと、本人がいないのをいいことに話を盛ってあることないこと喋りまくる。この一年半、そういう人たちの横暴な振る舞いがあまりにもつらかった。そういう意味では、皮肉なことだけど、大滝さんっていうのはホンモノのカリスマだったのだなということを思い知らされもした。

案の定、今回、これはナイアガラの跡目宣言だろうとか、他のナイアガラ関係者を牽制しているのだろうとか言う人もいる。そんなことを言われることを承知の上で、達郎さんは話している。インタビューの最後のほうで私が引用した大滝さんの言葉は、ちょっと唐突でよく伝わらなかったかもしれないけど、要するに、人の上に立つ人間、人の先を行く人間というのは、自分の意思に関係なくもともとそういう風になる宿命を背負って人間であり、カリスマっていうのはそういうことなんだっていう話の流れで出た言葉だった。「大滝さんだったらこう言っただろうな」などとドヤ顔で話すニセ預言者たちと一緒にされたくないので、公には書きたくないけれど、どうしてもここだけにはこっそり書いておきたい。達郎さんが大滝さんの話をする前にふっと一瞬の間を置いたのは、天国の大滝さんが「行け、山下!」と笑いながら言ったような、そんな感じだった。